ランの名花には物語りがあり、交配作出にはドラマがある。遥かな夢を描き一つの時代を築いた名花には、時代を超えた美がある。世界各地で毎年膨大な交配が行われRHSに登録されている。遺伝子を読みに読んで交配しても、一つの時代を築く花に出遭うのは極めて稀なことである。
だが、ラン作りというのは、だからこそ新花に夢を託してきた歴史である。
日本のラン界は外国に比較すると、新花作出への夢が少ないように感じられる。オリジナルへの想いが薄いようである。大量生産、大量消費の中で、時代を超える花・・・・への想いは何時の間にか語られることはなくなった。語る人はいなくなった。
このシンビ ガラパゴス パビリオンは、流沙にも似た時代の流れの中で埋没した名花を、熱情を込めて再発見するものです。シンビの育種は、他のランに比較して非常に大きな面積を必要とするので、新花への情熱はより強く深いものが要求される。この意味で名花を創った者への賛辞を込めてこのページを企画しました。


Carisonaはあまりに優れた交配親のために秘蔵され、日本には入っていない。
Balkisの一個体
輸入された個体名
Admiration HCC/AOS
Coronation AM/AOS

First Love HCC/AOS
Lady Rose AM/AOS
Party Dress HCC/AOS
Rose Durbar HCC/AOS
St Sherrie HCC/AOS
Triumph FCC/AOS
花径13cm
3−5月咲き  大型種 
ランの育種の歴史を語るとき、このLillian Stewartは一つの神話になった偉大な交配である。この交配は遺伝学の進歩をランの育種に導入し画期的に成功し、その後のランの育種に爆発的な希望を与えた。シンビのみでなく、ラン界に燦然と輝く金字塔で、世界各地の蘭展で入賞を欲しいままに、オーキッドショウに君臨した。今日まで、このリリアン スチュアートを超える交配は他のランにも出ていない。
RHS登録が1955年といえば、戦後間もない昭和で30年で、RHS登録は交配して開花して始めて出来るので、交配は少なくとも昭和25年頃と推定される。
♀のBalkisは1934年の登録で、染色体の研究進歩でこの系統の品種は4倍体であることが解明された。この時期、日本では木原均先生の4倍体スイカを交配して種無しスイカの開発は、最新の染色体研究の成果であった。この種無しスイカは3倍体で、性質強健で花は大きい。この特性をシンビに顕れた場合は、素晴らしい花容を持った個体を作ることが出来る・・・・・。この夢を実現するためにシンビの多くの品種で染色体の分析が行われ、アレキサンデリー、バルキス、ロザンナ、などの中に4倍体の個体が発見され交配親に用いられた。このひとつの交配がLillian Stewartである。予想したとうり性質強健で、花は巨大輪で、花弁は厚く、ステムは剛直で、花保ちは良く、絢爛豪華な美の世界をシンビは開拓した。神が創り残した美の創造であった。
この4倍体、3倍体の植物は、非常に性質強健で、バナナ、鬼百合、アマリリスは3倍体、ブドウの巨峰は4倍体です。この理論でデンドロの4,3倍体の名花は山本二郎氏によって開発され、デンドロのイメージを一新した。
Lillian Stewart はアメリカのAOSの入賞記録には、1955-1968年までに71個体が入賞している。銘花が文字どうり続出したのである。この記録に刺激されて、他のランでも4倍体の個体が発見され、カトレアではボーベルス系、デンドロではパーモス系が交配親に使用されましたが、カトレアではシンビのようには画期的には成功しなかった。1940−1960年代の洋ラン界は最新の科学の理論を育種に導入した時代で、世界中で銘花の作出にしのぎをを削った時代であった。夢のあった時代であった。この時代の先鞭を築いたのがリリアン スチュアートである。
Lillian Stewartは、洋らんに関係するものは、必ず知っていなければならない名前である。


 RHS登録 1955
 登録者  STEWART
 ( BALKIS  X  CARISONA )
シンビの育種は19世紀後半からはじまり、大規模に行われるようになるのは
アメリカの1950-1960年代である。この時代で、シンビのほとんどの美は発掘された。
GARAPAGOS ISLANDSは生物進化の標本の島。ダーウインの島。
最上オーキッドガーデンは、1950-1960 年代のシンビの育種上
燦然と輝く不朽の銘花をコレクションし保存してきました。国内では最も充実したコレクションになっています。
このパビリオンではその銘花を展観するパビリオンです。