上の写真は早春に咲くザゼンソウであるが、
 この仏焔苞の内部は「呼吸熱」によって温度が高く保た れている。虫に温かい環境を提供し活発に動き回って
 受粉して欲しいと・・・という魂胆である。

 昔、養蚕の蚕に桑葉を摘んで重ねて30分も経つと、
 内部の葉は50℃にもなった。短時間に葉は呼吸作用で 
 劣変するから、絶対に葉を堆積してならいことだった。
 これは、トウモロコシでも同じ。
 ダンボールにトウモロコシを入れておくと、
 ポカッというくらい温かい、熱い。
 トウモロコシの甘味の糖が呼吸作用で分解し、
 呼吸熱になった。品質が著しく下がる。
 流通上の大きな問題である。
 
 冬の期間の温室内の葉の温度。
 呼吸熱による葉の温度上昇は、
 ラン栽培においての非常に重要なものであるが、
 これまで、問題にされたことはない。
 
 宇井清太が提唱する「葉の温度の検温」というのは、
 以上のようなことで、株の衰弱、葉の衰弱に大きく関わっている。

 

 葉の呼吸熱について。
  
   温室栽培において、ランの葉を検温してみると、
   室温より葉の温度が高い場合がある。
   このような場合、ラン株の衰弱が著しく増大するが、
   このことが、これまで論じられたことはない。
   「換気」「通気」を行うで片付けられてきた。
   この場合の温度は「室温」である。
   葉の温度ではない。
   ラン栽培の盲点である。

   葉の温度が室温より10℃も高い場合がある。
   「呼吸熱」。
   換気、通気不良の時、CAM型のランでは、
   急激に呼吸作用により出た熱で葉の温度は上昇する。
   この熱で更に呼吸作用が増大する。
   光合成で作るエネルギーより、呼吸作用による
   エネルギーが多くなる? 近くなるという状態になる。

  こういう管理を行うと、数ヵ月後の夏に
  ナンプ病が多発することになる。
自然の法則は合理に満ちている。
それを勉強するのがラン栽培である。


 乾期の結露。
  命の綱の水である。
  パフィオ コクロペタラム亜属の葉のポケット。
  明瞭でなくても、この遺伝子はパフィオに
  共通するものであろう。

  この葉の水溜めのDNAはパフィオ固有の進化ではなく
  他の植物の前例を真似したものであろう。

  

  SUGOI-neでのパフィオ栽培は・・・
    日中葉を触って葉の温度を調べること。
    ポカッと温かい日は、必ず夕方「空気」に潅水すること。
     (自然と葉が濡れ、葉はロートの役目をして、株元に水を流す。
      SUGOI-neの優れた毛細管現象で最適な湿度になる)

    これで、葉は・・・ピンと立つ!!
    スゴイネ!!
    これで、パフィオは最高に作れる。

  
注意!!
     この栽培法はSUGOI-neだから出来る。

     SUGOI-neは、5月から9月頃までの期間は、毎日潅水しても根くされは起こらない。
     ラン菌の働きである。
     鉢底が超多湿状態でも全然根腐れは起きない。
     カトレアも、デンドロも・・・コチョウランも、バンダも・・・シンビも。
     勿論パフィオも起こらない。
     ラン菌が生きているからである!!
     ラン菌が「空気」を供給していると考えられる。
     自生地において、ランの根腐れは見られない。
     SUGOI-neは自生地を再現したコンポスト。
     これが、ここでも実証した。

     だからこの潅水が出来る。
     ランの葉は、桜が散って30日後ころから温度が高くなる。
     この高い期間は、秋になって朝の最低温度17、18℃まで下がるころまで続く。
    
     この期間に梅雨もある。
     空梅雨の年もある。
     曇りの日が何日も続く年もある。
     ランの葉の温度は、その他にも前記の遮光、紫外線、赤外線、散光の光の量、質、
     通気の仕方、棚の高さ、栽培場の地面の湿度・・・などによって大きく変化する。
     (出来るだけ、日中低くする人が栽培上手な人ということになる。)
     
    
 この期間は雨の日以外は、朝の葉の温度より日中の葉の温度は高くなる。
    しかし、曇りの日は、ポカッというほど高温にはならない。
    こういう日は、空気に含む水蒸気の「潜熱」の量が少ないから、
    夕方の潅水を行わなくても良いことになる。
    顕熱で自然に栽培場の空気の温度も、葉の温度も下がるからである。

    ラン栽培では、この葉の温度よりも、潅水による多湿がコワイ!!
    根くされがコワイ。
    これまでのコンポストでは、多湿による根腐れを防ぐことは出来なかった!!
    身体にコワササが染み付いている。
    ランがよく育つ潅水をすれば・・・必ず根腐れを起こす。
    だから、仕方なしに「辛目の潅水」を行なってきた。
    これが、栽培現場の感覚である。

      「ランを枯らすには刃物は要らない。
              水をやればあの世行き。」
   
    宇井清太がSUGOI-ne栽培では、毎日夕方潅水して・・・・と言っても、
    これを実行できる人は初心者である。
    ラン友会のメンバーは、これまでの豊富?な経験から、そんな潅水は出来ない。
    SUGOI-ne栽培で初心者が大成功して、ベテランが上手く作れない。

    それは、この理由である。

   「ペクチン」。
   日本のラン栽培者で根の「ペクチン」を知っていた人いなかった。
   だから、ランが水を要求しているのに、水を与えない「拷問」のような、

   ラン栽培を行ってきた。
        
  
したがって、以上の理由から、この期間の潅水は、
   葉を検温する。
   曇天が長く続く時は、根のペクチンを調べる。
   この二つの観察で、雨、曇天が続く時は、2,3日潅水を止めることもありえる。
   原則として、
   日中葉を検温して、高い日は、夕方「空気に潅水」「葉に潅水」すること。

   この栽培法では、葉はピンと上を向いてロートになるから、自然に根に水が貯蔵される。
   空気が交換されるまで空気に潅水すること。(潜熱の交換)
   自生地の雨は30分も1時間も降る!!
   山霧は朝まで棚引く・・・・!!
     周囲の不織布に充分潅水すると、この自生地と似た環境を作れる。
     不織布を張るのは、散光にするためだけでなく、この霧の湿度にするためでもある。

   
  厳禁
   SUGOI-ne以外のコンポストでは行わないこと。
    ラン菌がいないコンポストでは、この毎日の夕方潅水ではキケンである。


    この栽培法はSUGOI-neだから出来る!!
    だから、SUGOI-neはパフィオ栽培を一新できる。
    これまでのパフィオ栽培の壁を破ることが出来る。

    SUGOI-neの驚くべき成果が皆さんの目の前に姿を現わすだろう。
このような感じならパフィオは作れる。
モンスーン気候で進化したエビネ、CYMBIDIUMも
この小さな苗も細胞分裂を繰り返しながら生長する。
それを可能にするエネルギーは何処から調達する?


 4 葉の検温による夕方潅水。
    Cymbidiumはラン科植物進化の全てを内包しているランである。
    だから、Cymbidium栽培法の一部を応用すればパフィオも、カトレアも・・・・その他のランも容易に栽培出来る。
    このことを、日本のほとんどのランの趣味家は知らない。
    昔の人は知っていた。
    だから、ラン栽培はCymbidiumに始まってCymbidiumに終る・・・と。
    ところが、近頃、パフィオを栽培した人は、Cymbidiumを作らない。
    それでは大成しない!!
    パフィオには「腐生ラン」がない。
    腐生ランを研究しないラン栽培というのは光合成を知らない。炭素連鎖を知らない。
    ラン菌の働きを知らない・・・ということになるからである。
    ということは・・・コンポストを知らないということになる。
    それは・・・SUGOI-neで失敗する・・・ということに連なるからである。

   当然、パフィオの葉の温度など例会で聞いたこともない!!
    それではナンプ病が出るのが当たり前・・・である。

   宇井清太が今回行なっているパフィオ栽培は、パフィオの自生地とCymbidiumの自生地は
    重なるっているから、同じモンスーン気候の下で自生しているから、
    宇井清太がこれまで行ってきたCymbidiumの育苗、大株の栽培法と全く同じ栽培を
    パフィオに試みているものである。
    現在の日本のラン界には、同じ自生地に自生するランであっても、パフィオはパフィオ、
    シンビはシンビとして、その距離は遠い。
    同じラン科植物でありながら・・・ 
    その栽培に当たっても、相当異なった方向から栽培技術が研究されている。
    しかし、ランの歴史をたどれば、栽培技術において最も進んでいるのがCymbidium界である。
    最も早くメリクロンによる大量生産が完成されたのがCymbidiumである。
    それは、栽培する上での多くの問題点をクリアしたということである。
    そういう目線で見れば、パフィオの栽培上の問題点は、Cymbidiumにおいてはコンポストの問題を除けば、
    既に以前に解決済みのものが多いということである。

   SUGOI-neの開発で、コンポストの問題は一挙に解決した。
   
 パフィオ界では一部の人が、SUGOI-neにアレコレ、無視もあるがようであるが、
    事実が証明することになる。

   このことについては、パフィオを栽培している人の「体質」も少なからず関係している。
   人の考え方も、生き方も、ヒトの進化の中で多様化した。
   メリクロンという技術への評価。
   Cymbidium界はこの技術を評価し切花、鉢物の大栽培へ産業の道を選んだ。
   当然育種においても、趣味の品種から大栽培に適する品種作出への道を選んだ。
   一方パフィオはメリクロンを否定する道を選んだ。
   当然、一部の愛好の領域のランにならざるを得ない。
   オモト業界と似た道を将来もたどるのだろうか。
   ラン展では、パフィオの花を細かく分類して多くのカテゴリーを作っているが、
   そういう分類の仕方ならCymbidiumが最も美の領域が広い。
   Cymbidiumの花なら「物語」を作れるが・・・・パフィオでは物語は作れない。
   このことは、天が与えたDNAの壁である。


  SUGOI-neの開発で、メリクロンを否定したパフィオも、これまでの何倍のスピードで増殖する。
   プロから見れば、これほど「オイシイ」ことはないはずである。
   殖えなければ販売できないからである。


   「ペクチン潅水法」。
   「葉の検温による潅水法」。
   この二つが宇井清太のCymbidium栽培45年で得た潅水法である。
   この潅水法を開発したことによって1000万本のメリクロン苗を生産販売できたし、
   現在の大第栽培も継続できたのである。

   この秘密の潅水法でパフィオを栽培する実験が今回の栽培ドキュメントである
   SUGOI-ne栽培とこの二つの潅水法は、パフィオ界に衝撃をもたらすものになろう。
   一気にパフィオの栽培を変えることになろう。

   無造作にパフィオが作れるからである。

  葉の温度検温について
   一般の植物とラン科植物。
    ラン愛好家はランの何処を愛好しているのだろか。

   パフィオの何処に、何を感じて・・・・栽培する気持ちになったのだろうか?
  

   葉の検温を行うという行為の中には、この「愛好」というものの本質と、
   ランをとことん究明するという気持ちが宿っている。
   一口に言えば、パフィオの葉の温度も知らないで・・・・何が「愛好」といえるか。
   そういうことである。
   愛するということは・・・触れることである。さわるという行為が自然に出てくる。
   スキンシップという。
   宇井清太も妻を愛していたから・・・若い頃・・・・触った!!

   「素手」で・・・。
  そうすると・・・体温がわかる!!
  Cymbidiumも、パフィオも・・・・体温がわかる。
  子供を育てる時、風邪かな・・・・と想った時、必ず額を触る。
  素手で。
  この動作は、自然に出てくる。
  それが、育てるという本能である。
  ランを育てていながら、葉の温度も知らない。
  そういう人がほとんどである。
  ランの本には、このことがほとんど書かれていない。
  自生地の気象台の気温はあるが、自生地におけるランの葉の温度。

  ない。

  ここにラン栽培の盲点がある。
  ランの葉の温度を知らないで潅水している。
  ランの葉の温度も知らないのに・・・・花の審査はアレコレ・・・・。
  少し違うのではないか?

  「愛好」の方向が・・・・・。
  異郷の地に拉致されたパフィオの原種から見れば、そういうことかもしれない。

  温室の換気の仕方、前記した光の量、光の質で、ランの葉の温度は大きく異なる。
  このことがあるので、前の項目で紫外線、直光、散光にこだわった。
  
   1 葉の温度を調べる。
    イ 午前5時の時、一般の植物、多くのランの葉を手で触って温度を調べる。
      自分の額の温度を手の平で調べる。
      自分の額の温度と比較する。
      植物の葉は、この時間一般の植物の葉も、ランの葉も温度は同じである。
      なぜ、午前5時なのか。
      栄養生長期の4月から9月頃までの日本では、この時刻光合成が始まるからである。
      光合成と葉の温度には密接な関係があり、
      朝の最低温度は、本当は気温ではなく葉の温度である。
      大体この時刻の葉の温度は、前日の日没頃から顕温、大氣の温度の下降に添って下がるから、
      気温とほとんど同じである。
      したがって、この時刻の葉の温度は寒暖計の示す温度とほとんど同じである。
    ロ 正午頃葉の温度を調べる。
      一般の植物の葉。
        葉が冷たい。
      ランの葉。 
        ポカッと温かい。

        7月、8月には・・・チカッと暑く感じられる場合もある。

     ここがランが他の植物と最も異なるところ。
     これを知らないとランは作れない!!
     毎日必ず葉を触って検温していると、日中温かくなる時期と、温かくならない時期がある。
     この日本の季節による葉温の変化が、パフィオの栄養生長に大きく関与している。
     異郷の地日本でのパフィオ栽培と、自生地のパフィオでは、この葉温の違いが最も大きい。

    この葉温を自生地のそれに近くすることが、ラン栽培の基本中の基本である。
     低温温室。
     中温温室。
     高温温室。
     この温度の違いの温室の中で、ランの葉の温度はどうなっているか。
     これを調べなければ、温室内の潅水は間違う。
     外に出したときの葉の温度。
     当然温室の時と葉の温度は異なる

    風、通気・・・・当然葉の温度は異なる。
     温室で一番注意しなければならないとは、寒暖計の目盛りと、葉の温度が異なるということ。
     一致するのであれば、ラン栽培は簡単である。
     葉を検温したことのない人は、このことを知らない。

   CAM型のラン。
   普通の光合成を行なう植物から、複雑な回路を必要とするCAM型に進化するには、
   自生地の何100万年の気象データに果てに完成したプラントである。
   原種というのは、自生地の過去何100万年の気象の生き字引である。
   生きる上で限界を越えた条件になった場合は、当然死ぬから自生地ではなくなる。
   山を見ても、非常に限られた場所に自生するランは極めて多い。
   このことを考えれば、日本の温室で、自生地になりえる環境になっているところがあるのか?
   ほとんど皆無であろう。
   その一つに、葉の温度がある。
    自生地における葉の温度。

   これこそ、日中気孔を閉じるCAM型ランの最も重要なポイントである。
    日焼けするから「遮光」する。
    そのように理解している人は・・・ほとんど葉の温度を知らない。
    温室内の場合、遮光していても、気温が20℃でも、葉の温度が35℃という場合が出てくる。
    こういう状況がモンスーン気候下で進化したランでは致命的になる。
    室内栽培の期間は、外気温も低いから、換気の技術で、気温と葉の温度を同じにすることが出来る。
    同じにすれば大きな問題はない。
    このとき大切なことは自生地の温度較差。
    自生地における最低温度から最高温度に達するまでの所要時間である。
    同じにしなければならない。
    ここが一番難しい。
    ここを誤ると、数ヵ月後に「ナンプ病」の大発生に襲われる!!


   この項目で問題にしているのは、4月から9月までの外に出している期間、
    又は温室を全開している期間の「葉の温度」である。
    栄養生長期間の葉の温度である。
    日本の夏は暑い。ランにとって拷問に等しい。

   特に大都会では・・・朝霧の発生などほとんどなくなった。
   
   
   葉を触ってみて温かく感じられる日は、夕方潅水して葉を冷やす
    Cymbidiumの育苗で、これが最も重要なことである。
    右の写真は紫外線カット、散光、40%遮光のCymbidium育苗。
    散光にするためにサイドにも不織布を張っている。
    この葉の温度を前記したように毎日検温する。
  
    夕方葉を冷やす潅水を行なうとどうなる?
       葉の温度が速やかに18℃程度まで下げる。
       この温度は日中葉で光合成で構成された澱粉が、
       最も速やかに他の細胞増殖している部位、例えば「根冠」
       生長点などに転流する温度である。

       自生地では、よく出来たもので、葉の温度が高くなる時期は、
       モンスーン気候の雨期になる。
       モンスーン気候の雨期は、夜、朝、午前中は雨が降らない!!
       午後から雨が降る。

      午後から霧が沸き立ち山を覆い、棚引く・・・・・。
       Cymbidiumもパフィオもこの雨、この霧で栄養生長する。

      毎年繰り返されるこの雨、霧をベースに進化したのである。
       自生地におけるスコール、山霧に関係する湿度と気温、葉の温度は
       気化熱。
       顕熱。
       潜熱。

      CAM型のランは、この3種類の「熱が関係する湿度、気温、葉の温度」を利用して生きている。
      ランの本のには、夏は、夕方早く潅水すると、葉がもう一度温かくなるから、
     夜に潅水する・・・・。
     夕方潅水して芯に水が溜まると・・・ナンプ病に罹りやすいから・・・・。
     そういうように書かれているものが多い。
     宇井清太はそういう解釈はしない。
     45年の経験、1000万本の苗を育成した中から会得したものは、
     散光状態で、暗くならない中に、
       1 空気に潅水する。
       2 葉を冷やす潅水をする。
       3 根に潅水する。
       4 周囲に潅水する。
     この4つの潅水を行なうと素晴らしい生育することである。
     この4つの潅水は、前記の自生地における気化熱、顕熱、潜熱による葉の温度に深く関わるからである。
     この夕方の潅水は、自生地における雨期のスコール、山霧と日本の雨の降り方の違いである。
     Cymbidium、パフィオの自生地はモンスーン気候のスコールである。
     必ず、ほとんど毎日降る。
     午後から山霧が発生して、深い霧が山を包む・・・・。
     日本の夏はそういう雨、霧、湿度ではない。
      1 夕方空気に潅水する。
         この潅水が極めて重要である。
         この空気に潅水する技術、これは霧、雨は空気に水蒸気を含ませるので、それを真似たもの。
         
常圧においては水の沸点以下の温度でも、水は空気の中にある一定量まで気化している(飽和水蒸気)
         つまり湿度80%というのは、この空気にはあと20%の水蒸気が含むことが出来るということ。
         問題になるのは、この水蒸気に「潜熱」があることである。
         ランの栽培環境を考える場合、この湿度・・・水蒸気に含まれる{潜熱}が重要であるが、
         これまでラン栽培で、この「潜熱」が論じられたことはない!!
         
         自生地のスコール、山霧の夕方の湿度。
         ほとんど100%に近い。
         この100%という湿度は、雨、霧の温度と、
         日本の夏の乾いた空気。この空中湿度ではパフィオのプロトコームは生きられない。
         湿度を90%以上にするには空気に潅水する感じの潅水。
         理想的には、霧状にした水を空中から潅水する。
         水が気化して水蒸気になって湿度が高くなる。
        更に温度が高い
葉に水がかかれば気化して葉の温度を同時に下げる。
        速やかに葉の温度を18℃あたりまで下げる。
        この温度を下げるのが気化熱である。
        水の温度だけではなかなか早く下げることが出来ないが、空気、葉への潅水で、
        気化熱で容易に下げることが出来る。
        自生地では、スコール、山霧の気化熱で下がるようになっている。
        この18℃の葉温で葉から他の器官の細胞増殖している部位に養分の転流が最も速やかに行われる。
       このことが極めて重要な栽培ポイントである。
       夜に行った場合は、夕方から夜までの2,3時間の間に、養分は呼吸作用で失われるからである。
       
       
夕方この潅水を行なわない場合はどうなる?
        ★  熱帯夜の場合。(結露しない平地の栽培場)
        ★ 朝結露する場合。 (温度較差の大きい地帯。山上げ栽培場。)

         当然空気は冷えない。朝まで徐々に温度は下がってゆく。
         葉は夜まで温度が下がらない。
         この場合の気温、葉の温度の下がり方は大氣の顕温で下がるから緩慢である。
         丁度、湯飲みに入れた熱いおお茶を、そのまま机の上に置くと、段々冷めてゆくのと同じ。
         この冷め方は気化熱による冷め方ではなく、顕温による冷め方で、
         空気の対流によって温度が下がってゆく。
         夕方まで気孔を開かないCAM型ランでは、気化熱で葉は冷えないから、
         夕方潅水しないと、茶碗の湯が冷めれような感じで緩やかに葉の温度は下がる。
         この下降速度は自生地と全く異なったものになる。
         この速度では、根の根冠まで養分が到達しない中に、呼吸作用で消費してしまう。
         夏に根が伸びないのはこの理由である。
         細胞増殖するエネルギーが根冠まで届かない!!

         熱帯夜の場合、結露しない平地の場合は、温度較差が10℃もないから、
         夜中中、25℃以上の「潜熱」の蒸気を含んだ空気の中でランは生きることになる。
         CAM型ランは、夜気孔を開くから、空中湿度が低い場合は、
         この熱気の空気の中で貯蔵水分は蒸散作用で失われてゆく。
         熱気と脱水で・・・・極端に株は弱る。
       
         結露する場所、山上げ栽培の場合。
         温度較差が大きいから、夜半から空気は多湿になり飽和水蒸気になる。
         早い速度で顕熱による気温の低下、葉温の低下になるから、
         熱帯夜のような熱気と脱水は免れる。
         このような場所はパフィオの適地である。
         夕方潅水しなくとも、この夜半の高い湿度によって、少し脱水を免れる。
         結露は・・・・ランに水分を供給する。

       
夕方の潅水は空気に潅水する。
        熱い夕方の空気には熱い水蒸気が含んでいる。
        高い温度の 「潜熱」が含んでいる空気がラン栽培場の空気である。
        この空気に潜む「潜熱」のことを知らないと、パフィオの潅水は間違うことになる。
        空気に含む水蒸気は温度によって変化する。
        例えば温度30℃の時60%の湿度。
        そのまま顕熱で温度が下がると、ある温度で湿度100%になる。
        このとき「潜熱」は同じ熱の量であるから、栽培場の空気に含む熱は同じ。
        熱帯夜の時、ラン栽培場には、この「潜熱」の熱のこもった空気が充満している。
        扇風機を回しても・・・この空気を攪拌しているだけ。
        この状態は、自生地にはない。
        自生地におけるスコール、山霧は、大氣の対流によって日中大氣と入れ替わっている。
        異なった大気が森に流れる。
        ということは異なった「潜熱」を持った大気が自生地を覆うということ。
        冷えた水蒸気を含んだ大気。
        先ほどまでの温度の高い「潜熱」を持った水蒸気を含んだ大氣とはぜん異なる空気。
        ランはこの空気で夜を活動することになる。

        空中に潅水するということは、ランの周りの空気を別な「潜熱」の空気と取り替えることである。
        ということは、鉢にだけ水を与えてもランは作れない。
        それは、ただの根への水の給水、補給に過ぎない。
        空気には全然関係ないことになる。
        スコールは山全体に降る。
        これぐらいのスケールでないと、大氣の「潜熱」を変えることは出来ない。
        
        小さな栽培場で、自生地のように違う空気にするには、相当工夫が必要である。
          散光にする。
             夕方の赤外線を散乱させるため。
          栽培場の周囲に不織布を張る。
             強い乾燥した空気、風が栽培場に入らないようにするため。
          頭上から細霧状で潅水する。
             栽培場の空気を入れ替えるため(潜熱)
          全部の不織布を充分濡らす。
             出来るだけ長く、温度の低い水蒸気を含んだ空気を留まらせるため。
          栽培棚は地上30cm以下にする。
            出来るだけ長く、温度の低い水蒸気を含んだ空気を留まらせるため。
            翌日、棚下の水分蒸発による気化熱が、ランの株を冷やすため。
            棚が高いとこの気化熱による冷却が期待できない。

        
       
パフィオは夜も眠らない。
         
         翌日の光合成の為の準備を徹夜で行っている。
         当然、呼吸作用による養分の消費も行う。

         熱帯夜で乾燥した空気の場合はどうなる。
         パフィオの気孔あ夜開くから・・・当然水は蒸散する。
         蒸散させないと、葉を気化熱で冷やすことは出来ない。
         呼吸作用で消耗するエネルギーを抑えるために、貴重な水を使わなければならない。
         自生地にない異郷に地で生きるパフィオの姿である。
         こんな、ギリギリの選択の仕方は自生地にはない。
          毎日、夕方になれば自然と山霧が湧く。
          スコールが降る。
        このスコール、霧の水をCAM型植物は溜める機能を備えている。
        パフィオも例外ではない。
        右の写真を見れば、そこに共通点が見えるはずである。

   天から降って来た雨。
   天霧の水滴が葉の付け根に溜まるようになっている。
   パフィオ、Cymbidiumの自生地の乾期は、
   ほとんどの原種自生地は温度較差が大きい。
   「結露」。
   
   この結露で地生ランといえども生きなければならない。
   新参者のランが生きる環境は、特に乾期は厳しいところ。
   だから、地生ランであっても根には「ペクチン」を備えていなければならない。

   こういう葉の形は、雨は天から、上から降ってくるからである。
   葉を漏斗にして、雨を受け取り、収集しなければ生きてゆくない。
   その水を根元に流し落とす。
   根の柔組織に供給すると同時に、パートナーのラン菌にも分け与える。
   この理由で、葉に水を掛けない潅水、パフィオ栽培法というのはありえない。

  
この項目のまとめ。
   
    葉の検温による夕方の潅水は一石10鳥である。
     1 葉の温度気化熱で下げ、呼吸作用による養分の消耗を抑える。
     2 栽培場の空気の総入れ替え。
         高い温度の潜熱を持つ空気と低い温度の潜熱を持つ空気の入れ替え。
         これこそ、自生地に大気生動である。モンスーン気候の雨期を再現できる。
         この空気の入れ替えが、これまでの栽培にはなかった。

    3 夜の脱水の防止。
    4 朝まで空気の多湿状態を保つ。
    5 根の柔組織に長時間水を貯蔵できる。ペクチンの発現を遅らせることが出来る。
       翌日の早朝から盛んに光合成できる。
    6 速やかな養分転流が行われる。
    7 ラン菌へ水分を供給できる。
      夜間の湿度によって、ラン菌の活動が活発になる。
    8 棚下の多湿により、翌日の午前中の高温を気化熱で防ぐことが出来る。
    9 液肥が葉の間に入り溜まるので、速やかに吸収される。
   10 鉢の温度を下げラン菌の活動を活発にすることが出来る。
   
   
    朝潅水した場合は大きなダメージを与える。
     ナンプ病対策として、パフィオ、エビネ、東洋ラン・・・などで遮光を強くし夕方潅水しない栽培を行なう人がいる。
     これは、これまで詳しく記したように、モンスーン気候の下で進化したランでは成功しない。
     ばら、キウリ、スイカ、トマト・・・・などでは、夕方の潅水、雨等の多湿で、
     べと病、炭素病、ナンプ病など大発生する場合があり、それを連想して、朝潅水する人もいるが、
     ランを知らないか、誤解している人である。
     
     ランへの夕方の潅水は病気知らずの「妙薬」である。
     この薬の水を与える場合の絶対の条件が
      ○ 紫外線カット。
      ○ 散光。
      ○ 40%程度の遮光。
      ○ 桜が散って30日頃から開始する。
        栽培場の環境を上記のようにしないで、突然行ってはならない。
    である。
    
         
      日本の夏は温度較差が小さい。
        熱帯夜。
        朝の最低温度25℃以上。
        温度較差が5,6℃。
        こういう場所にランは最初から自生など出来ない。
        こういう場所でパフィオを栽培するというのは、最初から無謀なのである。
        農業なら「産地」になれない。
        適地適産が全然念頭にないのが、無視してかかるのが趣味のラン栽培。
        こういう不適地でパフィオを栽培する場合は、
        空気の水蒸気が持っている「潜熱」を排除する方法を考えなければ、株を弱らすだけである。
        扇風機では、同じ「潜熱」を持つ空気を回すだけだから、大した効果はない。
        乾燥した空気の場合は・・・・ランを逆に脱水で苦しめる。
       

     
      





     気化熱。
      一般の植物は葉の温度を高温から守るのにこの「気化熱」を利用している。
      日中光合成を行なうとき気孔を開く。
      この孔から炭酸ガスを吸収すると同時に水を蒸発させ、このときの気化熱で温度を下げる。
      この時、対流があれば蒸発は促進される。
      扇風機で風を起こせば・・・・葉の温度が下がる理屈である。
      この場合、空中湿度が100%であれば蒸発しないことになる。
      クチクラ蒸散が少しこれに加わる。
      
      Cymbidium、パフィオの場合はどうか。
      日中気孔を開いていない。
      葉に光が当たれば、大氣の温度上昇より早く葉温は高くなる。
      このような場所ではランが生存するのは難しい。
      クチクラ蒸散の気化熱で下げる温度には限界があるからである。
      自生地の山では、日本の平地での葉のように高温にはならない。
      そういう場所がランの自生地である。
      それには、光条件、空中湿度、気流・・・などが関係するが、
      この組み合わせがランにとって望ましい場所でなければ生きることは出来ない。 
      気化熱を利用できない身体をもっているのは犬である。
      暑くなれば・・・日陰のところで舌出してハハハ・・・・・。
      ランもそのような姿をしている。
      暑い最中でも光合成はしなくてはならない!!
      
      ランにとってこの状態は非常に危険である。
      光合成を行なう酵素はたんぱく質。
      40℃にもなれば活動できない。
      だから植物はアノ手、この手で・・・葉の温度を下げる仕組みを考えて進化してきた。
      人間は残酷である。
      自生地と異なる環境に鉢を置いて・・・愛好だと言っている!!

      Cymbidium、パフィオなどモンスーン気候に自生するランは、
      桜が散って30日過ぎたころから葉の温度が28℃より高くなる。
      日中葉をさわるとポカッと温かく感じられるほどになる。
      必ず夕方潅水すること。


    ランは自生地における「気化熱」「顕熱」「潜熱」の微妙な作用の中で生きている。
    このことを再現するのがランの潅水である。















































































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