Cymbidiumよりパフィオの進出エリアは狭い。
 したがって、栽培法も環境条件も狭い技術で作れる。
 バルブの持たないパフィオの限界である。

 赤線がCymbidiumの自生地エリア
 黄色線がパフィオの自生地エリア

 Cymbidiumとパフィオのほとんどの原種は
 このエリアに自生する。
 モンスーン気候である。
 同じ条件の下で進化した。
 したがってCymbidiumとパフィオには類似点が多く、
 同じ栽培法で作れる。

 
上の写真は、同じ条件で葉に光を当てた時の光の透過である。葉の裏側から見た光の強さである。
左はPaph, malipoense、右は葉の裏も緑の「ツヤ イケダ」である。
ツヤ イケダは明るく感じられるほど光を通す。樹木の緑の葉を通した光とほとんど同じ。
葉の裏が紫のPaph, malipoenseは、ぼんやりした光が見える程度で、光の透過率は相当低い。
これは、どういう意味を持ってこのように進化したのか?
当然、光の中には紫外線も葉を温める「赤外線」も含んでいる。
メセンの中には、ガラス窓を作って光を取り入れ、内部を暖めている種類もある!!
それとも、弱く少ない・・・・散光を・・・・出来るだけ多く確保するためか?
外に洩らさないで・・・吸収量を多くするためか?
強い光の時は鏡の役目もする?
・・・・・宇井清太の考えすぎか?

いづれにしても、自生地の光環境に大きな関係があるのは間違いない。
このような葉の裏が紫に進化した多くの他の植物の自生地の光を研究すれば、

見えてくるものがあるかもしれない。
Paph, malipoense、Paph armeiacumの葉の薄さ、硬さの秘密がわかるかもしれない。


それにしてもランという植物は、生き方が上手なのか下手なのか?
林床で生きる植物は他にも多くある。
福寿草、イチリンソウのようなものは、広葉樹の葉が日陰を作らない間に、
サッサと花開いて種子を作り、樹が葉を繁らすときには、もう姿を隠す。
パフィオはどうだ?
乾期の備えるバルブも準備しないで、豪雨の雨期も、乾期の乾燥にも、
同じ葉で耐えしのぐ・・・・。
こういう強靭な葉を持つパフィオだから、病気など本来ならば寄せ付けないはずである。
Paph, malipoense、Paph armeiacumの葉硬さは、病気とは無縁のようである。
そうでなければ、遅遅として生育の極めて遅いものが、生き残れるはずはない。
雨期にも耐え、乾期をもしのぐパフィオの葉に、未だ、誰も気付かない謎があるのかもしれない。


   次のページには
     宇井清太の新説

 
       「パフィオはラン菌を養殖している」
          本当に「ブラキペタラム亜属」は「石灰」がすきか?
             違うのではないか?

          そんなに単純な進化をしているとは考えにくい!!
             


  ランはどちらを選んだか?
  体温調節機能と乾燥防止機能。
   悩んだに違いない。
   そして・・・乾燥防止機能を選択した。

   この結果、異郷の地日本に来た原種は、
   温室内で体温調節できない!!


  つまり、パフィオの自生地では,常に通気がある。
  この通気で葉を冷やせる。
  それよりコワイのは乾期の厳しい乾燥である。
  この選択の結果、気化熱作用による冷却機能を
  捨て気孔を閉じることを選んだ。
  CAM型ランが想定しなかったもの、
  それは、温室で通気の悪いところに拉致される
  という事態だった。
  通気の悪い温室管理は、パフィオに最も
  苦難をしいることである。
  体温調節できない!!


  Cymbidium、」パフィオの病気は、
  この状態がほとんどの原因。
  薬ではほとんど止めることは出来ない。
Paph, malipoense、Paph armeiacumの葉の裏
 濃い紫色である。
 なぜだ・・・・?


  室内気温と葉の温度乖離は、ランを極端に弱らせる。

   ここで問題になるのが、葉の温度と光合成の関係である。
   近頃の研究でわかったことは、高山植物の早朝における光合成である。
   高山植物は0度以下の早朝の光条件での光合成である。
   光合成はある温度でなければ行われない。
   大氣の温度が低ければ光合成を行うことが出来ない。
   しかし、葉に太陽の光が当たり、葉の温度が一部高くなっても、
   その部分で光合成が行なわれることが解かってきた。

   これまで、キウリ、トマトなどの野菜栽培では、日の出時から、
   光合成の適温まで温度を上げて、炭酸ガス濃度を高くすれば、
   光合成は増大し、収穫は多くなるという温度管理が行われている。
    この場合、石油の削減から、日の出からの太陽光をハウスに入れることが
   野菜では行われている。
   そして一定の温度まで上昇した時、換気、換気扇を回す。

   
   ところが、Cymbidium栽培では、このような早朝からの急激な温度上昇では、
   よい生育は望めないばかりでなく、ハダニ、ナンプ病の大発生につながった。
   この換気の方法では、温度計の温度と葉の温度に大きな乖離が生じる。
   Cymbidiumは、このようなことが2、3日続くと、回復困難なほどダメージを受ける。
   一般家庭の部屋、廊下などにおいたCymbidiumでは、このような乖離は起こらない。

   Cymbidiumの温室栽培で、もっとも注意しなければならないのはこの点である。
   CAM型ランの一番の泣き所は「通気」である。
   山肌を昇り降りする大気の気韻生動が必要なのである。
   「風」ではない!!
   風なら・・・同じ空気を攪拌、回転させても吹く。
   別な適温の潜熱を持った水蒸気を含んだ空気の移動による通気である。
   ここに前記した、

   水は常圧の条件下で、沸点以下の温度でも気化し水蒸気になる。

   
この定義が重要になる。
   通気、換気というのは、空気の入れ替えではない。
   同じ空気の循環ではない。
   別な潜熱を持った空気の入れ替えである。
   葉の周囲の、温室内の微気象の問題である。
   このことがあるので、自生地の気温を測っても、参考にはなるが、
   その気温を温室内に再現してもランは良く育たない。
   最低温度と最高温度が本に記されているが、それではランは作れない。

  通気、気韻生動は、ランの光合成にどのように関係しているのだろうか。
  光がなくては植物は光合成は出来ない。
  光の中には紫外線がはいっている。
  赤外線も入っている。
  この赤外線をどう理解して、葉の温度管理するかである。当然湿度。
  空気に含まれる水蒸気の問題。
  イ 朝の最低温度5℃の温室
     当然、この温度で栽培しているランは冬は休眠期である。
  ロ 朝の最低温度8〜10℃の温室
     この温度で栽培しているランは休眠しているこもの、光合成を始めているもの。
  ハ 朝の最低温度15℃以上の温室
     この温度で栽培しているランは、原則的には休眠はしない。
     なぜなら、日本の冬に15℃以上で栽培しなければならないランは、
     四季の変化のないエリアに自生するランである。
     山形の気候なら6月である。
     栄養生長の盛りの気候である。
     この温度で若し休眠するランがあれば・・・・・それは低温で休眠するランではなく、
     温度が充分あっても、雨が降らないために乾燥で「休眠」せざるをえない状況に
     追い込まれているランである。
     カトレアなどでは、冬を乾期に見立てて潅水しているに過ぎない。
     北半球だから・・・冬。
  葉の温度を考える場合、以上のパターンによって違ったものになる。
  温室の中で葉の温度が高くなるとダメージが大きいのはイとロである。
  根が動いていない。
  葉だけ温度が高くなる。
   実際の栽培現場では、休眠、低温ということで、鉢は相当乾燥させている。
   根は冬の乾期なのに、葉は真夏の温度では植物は生きてゆけない。
   冬でも葉の落ちない常緑で低温に耐えているランでは、このことが非常に大切になる。

   例えば・・・
     ハの温室にイ、ロのランを同居させた場合、栽培現場では、ハのランに換気、通気の
     タイミングを合わせる。サーモをそれに設定する。
     この場合は、イ、ロのランは大きなダメージを受ける。
   細胞の「原形質」は液体である。
    この液体が細胞内で流動していることが最近突き止められた。
    問題はこの原形質は前記したように水分が85%。
    たんぱく質が約10%である。
    このたんぱく質!!
    40℃では「半熟卵」になって凝固する。
    細胞は生きてゆけない!!

    植物の光合成は光があっても一定の温度がなければ出来ない。
    この温度は光の中に含まれる赤外線、遠赤外線を利用している。
    この赤外線、遠赤外線がある温度までは有効に働くが、
    それを超えると・・・前記したように細胞の死滅する温度に上昇する。
    この温度上昇を抑制するために、植物は工夫を凝らさなければならない。
    この工夫は、自生地の過去何100万年間の気象データを基に作られたものである。
    これを、温室の中で無視した場合は、ランは枯れることになる。
    生きるための限界最低温度。
    光合成の為の最適温度。
    生きられる限界最高温度。

   それには葉の気化熱、大氣の顕熱、水蒸気の潜熱が複雑に絡み合う。
   更に大氣の対流が加わる。
   これを人工的に作った孤立した、隔絶した空間の温室に人為的に再現するというものだから、
   温室栽培というのは難しく、能力がモロに出てくる。
   アチラ、コチラ視察、見学した人ほど、何がなんだか解からない栽培になる。

  蒸れた状態の温室
   パフィオ栽培で問題になるのが・・・この「蒸れ」という表現。
    低温性のパフィオの蒸れ。
    高温性のパフィオの蒸れ。
    当然午前中においては、前記したように時間差が出てくる。
    だから、適地適産を無視したラン栽培では、栽培が困難な事態になる。
    パフィオでは・・・・。
     
   
    温室という概念は、温度を高温にするためのハウスと想う。
    この概念を持ってしまうと「蒸れ」を起こす。
    ここまでも何回も記してきたように、通気を行うタイミングを間違う。
    低温性のパフィオと高温性のパフィオの通気をはかる時間に少しのずれ・・・
    タイムラグがあるからである。
    Cymbidiumの苗を育成する時、カトレアと同じ最低温度にする。
    しかし、カトレア栽培の換気、通気のタイミングではCymbidiumの苗は良く生育しない。
    カトレアの換気、通気では、すでにCymbidiumは高温になっているからである。
    空気が蒸れているのではない。
    Cymbidiumの葉が、葉の内部が蒸れている!!
    この状態で、毎日続いたら・・・・Cymbidiumは育たない。
    3ヶ月後にナンプ病で・・・ほぼ全滅ということもありえる。
    Cymbidiumとパフィオは自生地がほぼ同じ。
    このCymbidiumのことが、即、パフィオに当てはまる。
    パフィオのナンプ病の問題は、この葉の内部の蒸れに起因する。
    葉の内部に「熱がこもる」!!
    日の出と共に始まる気温の温度上昇と葉の温度上昇。
    早朝の葉の温度上昇には気温の上昇に付随して上昇するものと、
    前記の高山植物のようにスポット光により、葉の一部分が温度が上がるものがある。
    遮光、散光の温室ではスポット上昇はない。
    密閉された温室では、密閉された葉になる。
    葉の細胞は一つ一つの密閉された小部屋である。
    室内の気温より、細胞は狭い小部屋だから温度上昇のスピードは速くなる。
    更に、室内温度の上昇は、温度の高い水蒸気を発生させ、
    温室内はこの潜熱を持った水蒸気を含んだ空気になる。
    葉は気化熱作用で温度を下げることは出来ない。
    CAM型ランでは特に密閉状態。
    「蒸れ」は・・・・このようにして起こる。
    密閉した車の中で赤ちゃんが死ぬのと同じ状況になる。
    蒸れをなくすには?
    最高最適温度を目安に換気してはならないということ。
    28℃を想定した時、室内気温が28℃で換気、通気をした場合は、
    ランへのダメージは計り知れないものになる。
    葉を検温すること。
    これが一番適確な判断になる。
    寒暖計を見ないで、葉を目を閉じて触ってみる。
    この場合、アチラ、コチラの葉を触って、一番温度が高くなる場所の葉の温度で行う。
    温室の場所によって、温度に大きな違いがあるからである。

  





















  なぜPaph, malipoense、Paph armeiacumの葉の裏は紫か?
    
宇井清太は面白い実験をした。
   パフィオの葉の裏が紫のPaph, malipoense、Paph armeiacum。
   なぜ、葉の裏が紫なのか。
   不思議に葉に濃淡の模様のある植物に多い。
   「鏡」を作っているのではないか?
   ガラスの裏面を黒くすると・・・・全部の光が反射するから・・・・鏡になる。
   これと同じ作用をPaph, malipoense、Paph armeiacumはしているのではないか?

   この透過率の低さは・・・・
   光の反射なのか光の吸収なのか?

   この他の原種ブラキペタラム亜属のbellatulumなどにも見られる。
   このような葉を持つパフィオ、その他のランでは、林床の弱い光条件に自生するものが多い。
   パフィオでは細かく細かく分けるが、こういう葉からの分類もある。
   進化の方向から、光条件が見えてくるかもしれない。



 











































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パフィオもSUGOI-neで植えると菌根になる。
菌根になると、バックの葉が何年も生きているようになる。
全部の葉で光合成を行なうようになる。
7年7月8日 日曜日 14:45:46
 軽石、鹿沼ミックスの雪割り草。 
 前年の葉が全部無い。
写真 2  7年7月8日 日曜日 11:04:15
    前年の葉が生きている。
      SUGOI-ne1号植え。

  上の軽石、鹿沼で植えたものと
  比較すると、菌根と菌根でない
  違いがわかる。
写真 1 SUGOI-ne1号単用植え
     雪割り草の菌根。
   

  6 最低温度から最高温度までの上昇速度を緩やかにする。
     
     温室内栽培期間。
      ランの最も特異な「弱点」「泣きどころ」をさらけ出す季節である。
      一般の植物のように気化熱作用で己の葉の温度を調節出来ない。
      通気による大氣の「顕熱」による冷却に頼る。
      このような進化は、ランの自生地が、通気、霧、弱光線の林床などに適応し、
      更に乾期の極度の乾燥にも耐えなければならないという特種な環境条件の中で選択したものである。
      温室という人為的な施設は、低温からランを守るということで作られるが、
      この隔離した空間というのは、逆にランの深山幽谷の自然界の環境条件と、
      著しく乖離した人為的な環境を作るという危険性を孕んでいる。
      最もランにとって弱いのは前記したように「葉の温度」の調節機能が非常に劣るということである。
      このことを知らないと、蘭作りでは大失敗する。
      このことで、多くの世界的な有名ラン園が、株の勢いを維持できなくて消えていった。
      育種で生きる蘭園が、株を保存できなくなった時、撤退することになる。
      したがって・・・この期間のラン管理は、葉の温度管理でもある。
      栽培者の能力が最も問われる場面でもある。

    
 寒暖計の示す温度と葉の温度を一致させる
      これが宇井清太のパフィオ栽培法のこの期間の決め手である。
        この期間のランに関係する熱、温度は
           1 気化熱。(葉の気化熱でなく、通路などに打ち水する時の気化熱である。)
                   CAM型ランでは日中気孔を閉じるから、気化熱作用を使うことが出来ない。
                    したがって、通気、換気を適確に行うことがラン栽培の絶対条件になる。
           2 顕熱。 (通気、乾期による外からの冷気による葉の温度の冷却である。
                    ランが頼りにする冷却は、この通気による冷却である。
                    低温性のランでは、極めて重要なものである。熱がこもった状態は、
                    低温性ランでは致命的になる場合がある。
                    東洋ラン界では・・・蘭は気を好・・・・というのは、昔の蘭舎であっても、
                    通気が大切ということ。温室というのは、非常に機密性のとんだものであり、
                    石油高騰から内張りをキッチリ行うほど、この通気のことが問題になる。)
           3 潜熱。 (夜間の密閉状態の中で水が蒸発した水蒸気に含んだ潜熱を
                   外気の温度の低い水蒸気の潜熱を含んだ空気で置き換える換気
                   による冷却である。特に高温性のパフィオでは、この換気を
                   しないと、温室内が蒸れた状態になる。
                   日本の冬の表日本は、温室の温度より外気温は低く乾燥している
                   ので、一般には通気による冷却で行っているが、厳密には、
                   空気に含む水蒸気の潜熱が重要である。乾燥した空気、つまり
                   水蒸気の少ない空気を急に温室に入れると、高温性のランには
                   厳しい冷却となる。)
     以上の三つの熱が関係するが、室内の気温を考える場合、これらの熱を知らないと、
     温室の温度管理は、適確に行うことは出来ない。
     
     ○ 気化熱。
        人間が汗を出して体温調節してる。これと同じ。
        ラン栽培では、庭に打ち水すると涼しく感じられる。
        歩道に打ち水する運動が昨年あった。
        クールビズ作戦。小池百合子大臣まで・・・・行った。

        植物のほとんどは気孔を開いて、この孔から水を蒸発させて体温調節。
        クチクラ層から水を蒸発させて体温調節。
        CAM型植物のラン。日中全ての気孔全開しないので、犬と同じ。
        熱くてハーハーとなる。

        Cymbidiumとパフィオの棚は地上30cmするな!!
        昔は、パフィオは半地下式温室と決まっていた。
        地面の気化熱の及ぶ高さである。
        水1ccが蒸発する時、○○cal必要化かは・・・・皆さん調べてください。
        パフィオは、自生地に海岸から、低地の林床、山の林床、樹上と自生地をほろげるが、
        海岸の岩壁でも自生できるというのは、海面の気化熱で冷やされた風、気流が、
        葉の温度を下げるからである。
        地面に這いつくばるように生きることを望んだパフィオは、地面からの気化熱、
        水蒸気の両方を利用して生きる。強い風を望んではいない。
        ここのところが、樹上の着生ランの気根、葉の気化熱利用と根本から異なる。
        水の貯蔵機能まで異なる。根のペクチンの具備に大きな差を見ることができる。

        気化熱の定義
         気化熱とは1gの液体を道音殿気体にかえるに必要な熱量

      ○ 顕熱

       温度計の示す温度が顕熱。
        温室内の気温は、暖房すれば、温度計の温度はドンドン上昇する。
        この温度が顕温。
        温室は日の出と共に、光線に含まれる赤外線などによって温度が加えられ上昇する。
        大氣も同じ。
        ガスを燃やして湯にすると同じ。湯の温度は上昇する。
        暖房機は、この原理で温室を温める。

      「魔法瓶」
       自然界においては、温度の高い空気は上昇し、温度の低い空気は下降する。
       そこのは自然に対流が発生する。
       この対流による顕熱の変化を真空の層で遮断したのが魔法瓶である。
       近頃の二重ガラス窓、温室関係では二重層のビニール。保温性抜群。
       ランの葉は、これとは逆に、大氣の顕熱の上昇、下降に合わせて葉の温度を上下させ生きている。
       自生地の大氣の上昇、下降速度と大きく異なる温室の温度にした場合は、
       ラン栽培は大失敗する。
       風は、この対流を激しくさせるが、パフィオにとって良い方法ではない。
    
     ○ 潜熱
        水蒸気に含む熱。
        水を加熱すると次第に温度は上昇するが、常圧では100℃になれば沸騰する。
        これに熱を加えても100℃以上には上昇しない。気化して水蒸気になる。
        この加えた熱は水蒸気に含んで空気中に気化している。
        水蒸気は目に見えない。
        雲、霧は白く見える。これは水蒸気ではない。水滴である。
        温度の高い水蒸気を含む空気が、冷却されると霧が発生する。
        パフィオの自生するキナバル山。
        ヒマラヤ・・・・・エビネの御蔵島。
        霧の摩周湖。
       
 水は常圧において、100℃以下でも気化し、水蒸気になって空気に含む。
        この100℃以下でも水は気化する。
        ランはこの水の性質の法則の中で生きている。
        自生地の乾期。
        Paph, malipoense、Paph armeiacumの自生地の乾期。
        空気中の水蒸気は夜になると、前記の顕熱の温度低下で、飽和水蒸気になる。
        この水蒸気を気孔を開いて吸収して生き延びる。
        更に、温度が低下すると葉に結露する。
        この結露を吸収して生き延びる。
        葉が薄く、葉肉に水分を貯蔵しなくても生きられる。
        熱帯雨林のコチョウラン。
        葉肉が水の貯蔵庫。
        パフィオにも葉肉を水の貯蔵庫にする種もある。
        大型のパフィオ。
        乾燥した地帯に生きる、又は雨期、乾期の激しいところに生きるCAM型植物は、
        この潜熱が含む水蒸気の温度低下がもたらす飽和水蒸気の水分と結露の水で乾期を生き延びる。
        アナナスを見れば、Paph, malipoense、Paph armeiacumの進化が理解出来よう。
        進化の一番原始的な姿をとどめているのは、その姿が一番乾期をしのぐに都合がよいからである。
        ほぼ同じエリアに自生するCymbidiumはバルブを具備するように進化した。
        しかし、Cymbidiumも9月から4月までの期間は、この飽和水蒸気と結露を葉で吸収する。
        夜露が発生する時期になると急にCymbidiumは元気を取り戻す。

        

      ランの自生地の朝霧、山霧、夜霧、温室の中に発生する霧。
        ランの自生地の深い霧でも花にシミは出ない。
        温室の中で、山に発生するような霧では、たちまちシミが出る。
        温室の中の空気にある水蒸気。
        その水蒸気に含む「潜熱」。
        「熱がこもる」!!
        空気がよどんだところに・・・・・。


       潜熱を発見したのは「ジョセフ ブラック」 (1728〜1799)
        1761年に発見。
     

    
通気と換気

    
通気。
     
ランの本には「通気」をはかる、「換気」を行うと書いてある。
     この二つは似ているが、厳密には異なるものである。
     通気はパフィオの自生地にあるが、換気というのは自然界にはない。
     通気というのは「風」ではない。
     通気というのは、自生地を通る大氣である。
     「気韻生動」。
     山全体の・・・・・対流による大氣の流動である。
     この流動は大氣の顕熱の変化で起こるもので「風」ではない。
     霧が静かに流れる・・・・・。
     温室の場合、この通気を「風」と解釈すると、多湿を好むランでは良く生育しない。
     秒速1から3m未満で外気が温室の中を対流を伴いながら移動してゆく。
     これが通気である。
     パフィオの基本の温室構造は、半地下式で、棚は外の地面とほぼ同じ高さ。
     このようにパフィオのイギリスの昔の温室は作られた。
     これは「通気」による温度管理に理想的なものである。
     湿度を保ちながら、緩やかに通気をはかれるからである。
     棚が75cmの高さでは、温室内での高さによる温度較差大きく、
     地面と75cmの温度は10℃も高くなり、地面で80%の湿度が、
     75cmの棚では60%に湿度に低下する。
     これではパフィオ栽培は難しい状況になる。

    
Cymbidiumもパフィオも葉の温度を緩やかに上昇させるには、この通気を行うのが理想である。
     顕熱の異なる空気での温度管理である。

    
通気というのは温室内の「蒸れ」とは関係なく、常に空気が通る状態である。
     ラン栽培では、この通気が最も大切。
     花にボトリチス病が発生しない。
     自生地で霧の中に咲くランの花が病気にかからないのは、この通気である。
     温室ないで、扇風機を回しても病気が出るのは、扇風機の風は通気でないからである。

    
密閉した温室内で扇風機を回しても、大きな効果は期待できない。
    

 
  
換気。
    
換気というのは自然界にはない。
    人工的に作られた空間の空気を入れ換えることである。
    パフィオ栽培では、特に高温性のパフィオで、多湿に状態の温室では重要なことで、
    通気では間に合わないとき、強制的に短時間に行うことが多い。
    又、換気扇を使った「換気」が行われる。
    排気排熱を兼ねて温室内の高い水蒸気を含んだ「潜熱」を温室ないから排気する。
    これに伴って新しい空気が温室内に入る。
    通気と換気は空気の移動という点では相似しているが、ランに対する影響は、
    微妙に異なる。
    換気扇と吸入口の位置を間違うと、Cymbidium、パフィオは良く生育しないということがある。
    空気の流れに「死角」が出るからである。
    排気の開始温度のサーモ設定温度を間違うと、大きな失敗につながる。
    温室における換気は「潜熱」の交換である。
    「蒸れ」対策である


 
自生地における葉の周囲の温度、熱条件

   
以上のように植物は、気化熱による高温抑制、大氣の対流がもたらす顕熱の変化、大氣の温度変化が
   もたらす水蒸気の「潜熱」の変化を、巧に利用して光合成、呼吸作用を行ない、乾期の乾燥おもしのいで
   生きている。自然界の現象は複雑である。刻々変化している。
   適地で一年中外で栽培出来るラン栽培の場合は、ランは特別な植物ではない。無造作に作れる。
   しかし、適地でない日本でのラン栽培は温室で栽培される。
   その時、最も管理者の能力の問われる場面が「温度管理」と「水管理」である。
   この両者は、前記したように気化熱、顕熱、潜熱による水との関係が密接で、ただ、根に潅水する
   考えではラン栽培は成功しない。
   潅水がもたらす「熱」への影響は、ラン環境に深く関わるからである。

   

   
秋から春までのパフィオは、Cymbidiumと同じ栽培法で作れる。
   
その理由は?
    自生地が同じだからである。自生地の標高に違いがあっても、かなり近似した環境条件である。
    

     
     
 Paphiopedilum
        原種 約75種
      
Cymbidium
        原種 約50種

     
同じ原産地 自生地のものをまとめてみる。自生地がオーバーラップすることがわかる。
     つまり、Cymbidiumとパフィオは紛れも無くモンスーン気候の下で進化し、モンスーン気候
     の環境条件で生きるランであることが解かる。
     したがって、パフィオの栽培は、Cymbidium栽培技術でほとんど作れるということである。
     日本のパフィオ栽培とCymbidium栽培は、面積を広く必要か否か、メリクロンできるか否か、
     そういう要素でパフィオ界の人は、ほとんどCymbidiumを栽培しないが、以上のことから、
     パフィオを研究する場合は、同時にCymbidiumを研究すべきものである。
     なぜなら、ラン栽培では、Cymbidiumの栽培技術が最も進んでいるからである。


     ヒマラヤ地域
          Paph bellatulum,charlesworthii,concolor,fairrieanum,insigne,
               spicerianum,sukhakulii,venustum,villosum,wardii

   

          Cym  devonianum,eburneum,elegans,erythraeum,faberi,
                grandiflorm,hookerianum,i’ansonii,insigne,iridioides,
                lowianum,mastersii,munronianum,scnoederi,tracyanum,
                whiteae,

       
    

       
カリマンタン島
          
Paph  bullenianum,dayanum,hookerae,kolopakingii,
                lawrenceanum,liemianum,niveum,rothschildianum,
                sanderianum,stonei,supardii,virens,


         Cym  atropurpureum,bicolor,chloranthum,dayanum,ensifolium,
               finlaysonianum,rectum,
 
      スマトラ、ニューギニア、オーストラリア
                  
Paph     工事中
             Cym  
 aloifolium,bicolor,canaliculatum,chloranthum,dayanm,
               ensifolium,lancifolium,madidum,rectum,suave,


       フィリピン
         Paph  acmodontum,adductum,argus,ciliolare,fowliei,haynaldianum,
               hennisianum,philippinense,randsii,urbanianum,
 

         Cym  atropurpureum,bicolor,esifolium,finlaysonnianum,

       

       
ベトナム
          
Paph callosum,delenatii,helenae,henryaqnum,malipoense,
          Cym insigne,erythrostylum,sanderae,

       
中国
         Paph appletonianum,armeniacum,barbigerrum,concolor,
              emersonii,henryanum,hirsutissimum,micranthum,
              purpuratum,tigrinum,


         Cym aloifolium,ensifolium,erythtaeum,faberi,floribundum,
              goeringii,hookerianum,iridioides,kanran,lowianum,
              pumilum,sinense,tracyanum,wilsonii,


       

    
このように分類してみると、植物分類学のパフィオとは、別な流れが見えてくる。
     パフィオも、Cymbidiumと同じように、種の起源はヒマラヤ地方であることがわかる。
     そこからCymbidiumとほとんど同じルートをたどって進出した。
     しかし、Cymbidiumほどには北緯、南緯ともに進出できなかった。
     このことは、Cymbidiumより栽培条件は限定され、この条件さえ満たせば、
     栽培は容易なランといえる。

    
このことから、Cymbidiumの栽培技術、温室管理でパフィオは作れるということになる。
     最低温度の設定の違いだけである。


       
地生ラン  Cymbidiumにもパフィオにもある。
         着生ラン  Cymbidiumにもパフィオにもある。
         
腐生ラン  Cym macrorrhizon   パキスタン、北インドから日本。
                  Cymbidiumには、この腐生ランが一種含まれている。
                  進化の多様性を示すものである。
                  パフィオにこの腐生ランが存在しないから、炭素連鎖の研究がないのかもしれない。
                  6亜属、13節も分類しているが、Cymbidiumから見ると進化の巾は逆に狭い。
                  本当に、パフィオが生きる上のDNAが、そんなに異なるとは理解しがたい。
                  Cymbidiumの方がヒマラヤのCymbidiumと日本の春欄、カンランの違いは大きい。
                  この理由で、栽培では、Cymbidiumよりパフィオの方が易しい。

       
交配種
         Cymbidiumもパフィオも交配種は膨大な数であり、現在も年々登録されているが、
         実際に優れた花を生む原種は限られており、Cymbidiumでは50余種の原種の中で
         10余種である。
         Paphではマニアックな嗜好から、交配は多彩に行われるが、美の領域は限られており、
         神話を作るような交配親、突然変異株は育成されていない。
         本当の赤花、セミアルバ、剛直なステム・・・などは、今後も期待出来ないだろう。

        

         つまりCymbidiumもパフィオも源流をヒマラヤに発し、各ルートに進出したと考えられる。
         まさにモンスーン気候のオーキッドロードである。
         その道はシャクナゲのロードでもある。
         
以上、パフィオ栽培はCymbidium栽培法で作れるという理論的根拠を示した。
       

   
温室栽培期間中の管理の基礎になるもの。

     Paph Tsuya  Ikeda ' Oiso'
                
遺伝子構成は 
                  spicerianum  15,63%
                       villosum       15,63%
                       不明          25,00%
                       insigne        43,75%   
アルビノ型 sandeerae
     
 この品種は典型的なヒマラヤ型のパフィオ。
        Cymbidiumの栽培温室で、同じ管理で栽培出来る。

       ラン科植物の分類は、わずかな違いを大きく取上げ、種の細分化しているが、
       多くの研究家が外部の形態、特徴などを捉え、パフィオでは6亜族13節に分類しているようである。
       そういう分類の仕方から栽培法の違いを導き出す方法がとられているが、
       そのやり方では、何時までたっても栽培上の進歩はない。
       そういう見方を宇井清太はしている。
       なぜならパフィオの進化の「根本」は?
       二つある。
       1 「ラン菌との共生」が生き続ける為の、種の継続のための自生地における絶対の条件である。 
           植物は移動できない。 これが絶対の植物の原理原則である。
           エアープラントも好き好んで、伊達や酔狂で空中で生きるわけではない。
           種子が空中に浮遊して発芽するわけではない。
           ランもそれと同じこと。
           ラン菌と共生して発芽し・・・プロトコームを形成する。
           これが絶対の根本である。
           パフィオに6亜族13節あるというが、ラン菌との共生で発芽するという今般から見れば、
           パフィオ一属どころか・・・ラン1科1属である。
           ラン菌から見れば・・・・そうなる。
           人間から見た分類でなく、ラン菌から見た分類の仕方が必要である。
           そういう観点から見ると、ランの根本、本質が見えてくる。
           宇井清太のパフィオ栽培は、この視点から試験している。
           モンスーン気候下で進化したラン科植物は、この地球規模の環境を遺伝子の
           中に持たない限り、これまで種を維持継続できないからである。
        2 パフィオのパフィオたる絶対のものは「落とし穴」に昆虫を落とし受粉することである。
           6亜族13節に分類し、70種に人間は分類しているが、
           花は植物の「生殖器」であるという絶対の機能から見れば、
           人間がどう花の形態、特徴で分類しようが「生殖器」に変わりはない。
           この「生殖器」の形態変化で分類することが、パフィオの本質を分類することに
           なるのかどうか。恐らく否であろう。
           ラン科植物全体の「生殖器」の分類から見れば、6亜族13節としていても、
           パフィオが子孫を残すための「生殖」するためのSEXするためのテクニックは、
           「落し穴」に昆虫を落とすことから始まることにおいて、全て同じ方法の進化である。
           
      ○ およそ植物にとって、どのような方法で受粉するかは、最大の問題である。
           風媒花。
           虫媒花。
           水媒花。
        ラン科植物は3つの中から虫媒花を選択した。
        残るのは・・・・虫を利用するためのテクニックのみである。
        ラン植物の分類は、このテクニックを細分化したものである。
        Cymbidiumは舟。
        パフィオは「落とし穴」。
        それだけの違いである。
        ヒトはどうか?
        人種の違いがあっても、テクニックは同じである。
    
     ○  植物にとって、種子をどうやって発芽させるかが次に大問題になる。
          胚乳を具備した。
          胚乳を無くして種子を微細にして・・・・胚乳の変わりなるものを探した。
        ラン科植物は自生地では新参者。
         必死になって地域定住の固定観念を捨てて・・・・新天地を探す生き方をした。
         そこで生きるには「狡猾」といわれようが、生きるギリギリの選択で、
         外敵にもなるラン菌と共生関係を結んだ。
         戦国時代の敵のお姫様と結婚したようなもの。
         短刀を抱いている姫と夜の生活するようなもの。何時、寝首をかかれるか解からないが、
         新参者が生きるには、そういうキケンをあえてしなければならない。

    この二つが絶対の原理原則である。
    残りの条件は、発芽したものが、その場所の環境諸条件に適応した姿である。
    その諸条件は、ラン栽培では、趣味のラン栽培ではコストと関係ない場合は、
    カネと努力でどうにでもなる枝葉末節のことである。
    事実、日本でもパンダは飼育できる。
    旭川の旭山動物園でもゾウ」は飼育できる!!
    温室も、環境整備器機も、暖房機も・・・・なんでもカネで解決できる。
    一番問題になるのが栽培者、管理者の感性と能力である。
    場合によっては・・・・能力の無いヒトの管理より、
    能力のあるヒトがくんだプログラムのパソコン管理の方が・・・・よく出来るということもある。
    そういうことの対極にあるのが・・・・パフィオ愛好会のプライドであろう。
    大量生産の生産システムは、育種も含めて・・・規格化である。
    パフィオも含めてラン科植物は進化の途上で、細部を見れば・・・・
    植物分類学的に見れば「多様化」の進化に見えれるが・・・・
    ランの根本から見れば「規格化」の進化であった。
    花の形態はまさに典型的な「定型」と「規格化」である。
    ランの種の発芽のメカニズムは・・・まさに「規格化」である。

    この規格化への進化がランが生きる上で選んだ唯一の道であった。
    このことを視野に入れて栽培法を研究しないと、暗中模索になる。
    羅針盤のない航海と同じになる。
    多くのランの本を見て見る。
    このラン科植物の根本、原理原則から書き起こされた本はほとんどない。
    枝葉末節の栽培法である。
    パフィオの栽培法の本を見てみる。
    6節亜族13節に分類して栽培法が記されている。
    でも、根本の絶対の根本「ラン菌」のことは削除されたままである。
    自生地の場所、標高、気温、埴生・・・などは・・・・18、9世紀の記述の様式。
    ラン菌のことは、目に見えないから削除。
    ランの自生地の観察は・・・そこで止まっている。
    そこに、ラン栽培のほとんど全ての問題がある。
    「ラン菌」削除のコンポストで、他の条件を温室に再現しても、ほとんど問題は解決しない。
    リービッヒの最少律が当てはまるからである。
    その一つにパフィオの「ナンプ病」の問題がある。
    現在の、水ゴケ、ミックス、杉皮では・・・今後も解決出来ない。
    遠赤外線でナンプ病は解決出来ない。
    活性剤でナンプ病は解決出来ない。
    薬剤でも出来ない。
    ナンプ菌の繁殖スピードに太刀打ちできない。
    なぜなら、ランは抗生物質の中で生き続けることが出来ないからである。
    潅水、湿度の問題。
    温度の問題。
    休眠の問題。
    肥料の問題。
    これらの問題に「ラン菌」は深いかかわりを持つ。
    現在の栽培法は、ラン菌削除のコンポストでの栽培法であり、コマクサとパフィオのコンポストが同じ。
    そういう「暴挙」が・・・パフィオから見れば・・・・・現在の栽培法である。
    こういうことを行っている限り・・・・絶滅危惧の問題は解決しない。
    なぜなら、自生地から掘ってくることは簡単に出来るが、自生地を再生することは、
    ほとんど不可能である。
    現在の栽培法が、ラン科植物の根源に迫る真の栽培法であるなら、自生地を再生できるはずである。
    それが出来ないということは・・・・根本のところに問題があるという証明である。
   
         
 パフィオの原産地は、前記したように、赤道をはさんで、北緯、南緯にまたがり、
        更に赤道直下の場所の標高の低いところから高山地帯まである。
        四季の変化が明瞭でないところ。明瞭なところ。
        雨期の季節が異なる。
        最低温度に大きな違いがある。
        このようなことはCymbidiumの原種でも見られる。
        こういう違いがあっても、6亜族13節のパフィオの根本のDNAに大きな差はないと考えられる。
        なぜなら、Cymbidiumの原種も自生地においてはパフィオより、
        北緯、南緯の幅が広いが、Cymbidium栽培の基本にほとんど変わりはない。
        東洋ラン界では、ヒマラヤ系のCymbidium・・・洋蘭のCymbidiumと、
        異なった栽培法をおこなっているが、冬の最低温度の違いはあるが、ほとんど変わりはない。
        こういうことがCymbidiumにあるということは、パフィオにも当てはまるということである。
        パフィオがラン科植物の中で特別な存在ではない。
        なぜなら、パフィオには「腐生ラン」が一種も存在しないからである!!
        光合成の進化から見れば、究極の進化を放棄したランである。
        腐生ランから見れば「単純」だからである。
        その「狡猾」さにおいて・・・・。
        受粉ではSEXでは・・・いかんなく・・・その狡猾さを持ったパフィオが、
        光合成という労働の現場では、狡猾さは姿を消し普遍的に見られる作業をしている。
        
        このことは、パフィオ栽培において「適地適産」であれば栽培が難しくはない。
        それが、愛好ということになると「珍奇」「最新」・・・に群がり、
        適地適産を無視、削除した栽培に走るからである。
        別な植物に比較すれば、パフィオ栽培程度の難しさは、どんな作物にもあるということ。
        例えば「さくらんぼ」を鹿児島で栽培すれば、パフィオ栽培とは比較にならないくらい、
        困難さがあるということ。
        つまり、熱帯植物を寒冷地では・・・・割合容易に作れる。
          事実、イギリスで熱帯植物はほとんど作れる、キューガーデンを見れば
          理解出来よう・・・・。
        ところが、寒冷地の植物を熱帯で作るのは至難である。
        「顕温」の問題である。
        さんさんと地球に降り注ぐ太陽からの熱による大氣の高い温度は、
        生物生命の根幹に関わるからである。
        光合成に関与する「酵素」
        この酵素はたんぱく質でアミノ酸。
        この酵素が働ける温度条件は限定されるからである。
        ほとんどの植物の光合成が30℃を超えると、途端に落ちるのはこの理由である。
        この30℃以下の範囲の中で植物は適温を求めている。
        高山植物と熱帯植物の違いは、光合成の効率の温度差である。
        10℃で最高のものもあれば、28℃で最高のものもある。
        この効率を求めて・・・・気化熱を使う。

      この観点から見れば6亜族13節の分類は、栽培においては重要な意味をなさない。


     SUGOI-ne栽培ではどうか。 今度パフィオ栽培は一新する。
      
       なぜ一新するのか?
       前記したようにランの絶対の根本は「ラン菌との共生」を具現したからである。
       ラン菌のいないコンポストでは、問題が出たとき解決の糸口が見つけられない。
       このことがパフィオの「壁」である。
       例えば 
         
コクロペタラム亜属。
          この種の葉と葉の間のポケット。
          なんのためにこのように進化した?
          この説明は前項のところでアナナスとの比較の写真で示したが、
          これに水が溜められない栽培法など最初からない。
          これに水が溜まると「ナンプ病」では、自生地では生存できない。
          そういうことである。


       SUGOI-ne栽培では、こういう進化の原理原則が可能になる。
       別な例を上げよう。
       パフィオも無菌培養で種子は発芽出来る。
       しかし、この方では、どう頑張っても自生地を「再生」出来ない。
       日本に現在ある株を増やすだけ。自生地再現とまでは行かない。
       パフィオの自生地における乱獲の問題は10年以上も前から叫ばれている。
       だが、ラン菌の開発が行われなかったから、現在まで乱獲は続いてきた。
       深い知識があるわけではない。
       豊富な経験があるわけではない。
       確かな技術があるわけではない。
       そいうことであれば、枯れるのが当たり前。
       更に、それに加えて・・・ラン菌削除では、ランから見れば踏んだり蹴ったりではないか。

       SUGOI-neはこのような「ランが泣く」栽培からの一新、脱却である。
       パフィオと他の植物でその例を写真で示す。

      
 写真はキンポーゲ科の「雪割り草。
        写真1.
        SUGOI-neで一年栽培した根の状態。
        根毛が全然ない。
        「菌根」になっている。
        SUGOI-neのラン菌が雪割り草では共生する「材木腐朽菌」である!!
        雪割り草が「菌根菌植物」という研究あほとんど無いようである。
        それで、現在雪割り草の栽培は、ほとんどパフィオと同じような
        コンポストで栽培されている。
         「軽石、硬質鹿沼・・・・」などミックス。


      
 このようなコンポストでは、寒冷地なら、翌年の夏まで前年の葉が
         生きていられるが、暖地での栽培ならほとんど前年の葉は夏になる前に枯れる。


       
写真2.
         
SUGOI-ne1号植え、紫外線カット、散光。 
         ハウス内温度 最高温度35℃以上。

         写真は7月8日に写したものであるが、前年の葉が生きている!!

         
この状態を・・・どう説明する?
         SUGOI-neのラン菌よる・・・とするのが一番理に適っている。
         これまで、ラン菌のいないコンポストでは、こういう姿を現わさなかった!!
         そういう生育をパフィオでも・・・・多数報告されている。


        その一例を示す。

          
右の写真はSUGOI-neで2年栽培したパフィオであるが、
          5年前のクリプトモス時代のバックの葉が生きている。
          この姿は、前記の雪割り草の前年の葉が生きているのと
          全く同じ姿である。

        
パフィオも雪割り草も「離層」をなくした!!
        なぜ、このように進化したのか?
        そこには、菌根菌との深い関係の謎があるのではないか。
        「炭素連鎖」。
        更に、このような離層を無くしたパフィオであれば、
        葉と葉の隙間に雨水は入り溜まることは当然のことある。
        逆に雨水が入り溜まるように進化したと見ることが自然である。
        なぜならパフィオのは「ロート」であるからである。
        垂れるような葉ではロートにはなれない。
        この理由で、若しパフィオの葉が垂れている場合は、
        当然、どこか間違っていると考えるべきであろう。
        そのような葉では、当然アンプ病も発生する。
        「離層」が無くても大丈夫に進化した葉になっていないからである。
       

 
   温室内でのパフィオ栽培。
    
前記したように、日本における寒冷期の温室での、
    日本より温度の高い地域に自生するランの栽培は容易である。
    温度の問題は、暖房機による顕熱で、ここの種の「適温」にすることは容易だからである。
    問題は、石油の高騰によるコスト上昇である。
    このことは経済的問題であって、栽培の難易とは無関係である。
    経済的にどんなにコストがかかっても良い場合は、この冬期間の温室栽培は、
    ランにとっては、しばしの快適な生活な時間である。
    そうであるはずである。
    しかし、現実には「地獄」「拷問」のような時間の場合が多い。

  
 栽培者、管理者の能力のことで、ランは苦しみ、泣くことになる。
   一番問題になるのが
     葉の最低温度から・・・・光合成最適温度・・・・最高温度への上昇速度である。
     このことが、これまでの本に書かれたことはない!!
     気温ではない!!

    なぜ気温ではないのか?
    ここが宇井清太のCymbidium栽培のポイントである。
    ラン栽培イにおいて「葉温」が問題視されたことはない!!
    ここに、これまでのラン栽培の「盲点」が潜んでいる。
    ここのために「換気」「通気」「扇風機」の意味が解からなくなり、
    タイミングを失い、意味もの理解しないまま扇風機を回すことになる。

    ラン栽培において、気温と葉の温度が一致すれば問題はない。
    だが、温室内の栽培において、一致することの方が希である。
    葉の温度の上昇。
    日の出から2時間くらいで30℃にも気温が上昇する温室。
    6時間後に30℃になる温室。
    この温度の変化の違いだけでも、ランの種類によって大きく生育に差が出る。
    更に、気温が15℃のとき、葉の温度を30℃にする人。
    この場合は、前記した気化熱、顕熱、潜熱に関係することが・・・
    全然自生地と異なることからラン栽培では致命的になる。
    
    カトレア栽培の温室で、栽培の人が・・・・Cymbidiumをよく作れない。
    Cymbidiumの小さなメリクロン苗を良く育てられない・・・・という理由は、
    この問題が原因である。
    Cymbidiumの葉の温度を調べたことないからである。
    パフィオにナンプ病が出るのも、この葉の温度を知らないからである。


   なぜ、こういうことが温室の中で起こるのか?
    地球上に生きている生物は、120℃の温度30分で全て死滅する。
    この理論で、手術用の器材はこの条件で「滅菌」する。
    メリクロン、無菌培養する場合もこの条件で行う。
    そうでない場合は常圧(1気圧)で100℃で沸騰してから60分。
    これを24時間おきに3回繰り返すと全て死滅する。
    「コッホの殺菌釜」。
    コッホが1880年代に発見したものである。
    この条件から段々温度を下げてゆくと、生き残る微生物が出てくる。
    病害菌を殺して、有用菌が生き残る温度を「低温殺菌」という。
    この温度では植物はどんなものも生きることは出来ない。
    一部の耐熱菌のみである。
    更に温度を下げてゆくと、多くの微生物が生き残る。
    更に温度を下げて約40度前後になると、動物、昆虫、植物もどうにか生きられる。
    しかし、長時間生きることは出来ない。
    多くのウイルスも、この温度になると生き残ることは出来ない。
    人間も40度の高熱になると・・・・脳が変になり・・・・。
    イチゴ、菊、果樹などのメリクロンする時、大きい茎頂を採芽するときは、
    このギリギリの温度で栽培する。
    密閉した空間では、この温度ではほとんどの植物は死滅するが、
    風を循環させると、どうにか気化熱でウイルスが増殖できないが、
    わずかな差で茎頂の細胞は増殖する。
    この細胞をカットすればよいことになる。

    この温度を更に下げる。
    段々、多くの植物が生き残れるようになる。
    だが、元気が良い状態ではない。
    しかし、朝の最低温度が低ければ、相当元気で生きる植物も出てくる。
    砂漠に近い温度較差の大きいところに自生するブドウ、ウリ科のメロン、スイカ、などである。
    葉を無くしたシャボテンなども生き残れる。
    更に温度を低くして28から30℃近くになると、熱帯、温帯に自生するほとんどの植物が、
    生きられるようになる。

    これは、光合成に関係する酵素がたんぱく質で、多くの植物で、この酵素を利用して
    光合成を行なっているからである。
    ランの26000の原種の中の90%以上は、この温度を光合成の適温にしていると考えられる。

    これが、ランの温室栽培する場合の日中の適温である。
    ほとんどのランで、この温度を超える高温は、光合成は頭打ちになるが、
    片方の呼吸作用の増大でエネルギーの消耗が大きくなり、結果として、
    一日あたりの生産性は減少する。
    パフィオの6亜族13節に分類された原種たちも、この最高温度はほとんど同じである。
    問題は最低温度。
    自生地の北半球では10月から翌年の4月までの月別の最低温度と最高温度。
    この温度、風、湿度などが自生地のパフィオの葉の温度を左右し、

   光合成を左右し、これが、場合によっては、生育停止又は休眠まで行わしめることになる。
   自然は生きものに過酷であり「優しく」はナイ!!
   
   最低温度がその植物が生きることが出来る限界温度を超えて低温になった時、
   その植物は全滅する。
   その限界温度を知る必要がある・・・温室栽培では。
   一日なら耐えられるが10日は耐えられないということが植物にはある。
   冬・・・宅急便でランを輸送する時、このことが重要になる。
   暖地の蘭園から買うのを・・・・寒地の人が冬に購入するのは危険。
   この理由である。
   Cymbidiumも熱帯から北海道まで種は分布している。
   パフィオはそこまでではないにしても、相当最低温度に差がある。
   時に霜の降りる中国奥地に自生するものもある。
   ボルネオには、フィリピンには標高の低いところに自生しているものもある。
   当然最低温度は15℃以上である。しかし、自生の条件はそれだけではない。

   温度的にはそういうことであるが、ここで重要になるのが、自生地の気韻生動。
   大氣の大きな対流である。乾期でも生きられる湿度。
   常緑の葉を持ち、バルブの持たないパフィオが100%休眠することはありえないから、
   乾期でも光合成を行なうに足る温度、光、水分の確保が必要である。
   午後に霧が発生する場所。
   朝に霧が発生する場所。
   この二つは似ているようであるが、根本から異なる条件である。
   ラン科植物はこの微妙な違いを捉えて進化してきた。
   このことを温室に取り入れないと、素晴らしい生育は望めない。
   温室の中での葉の温度上昇に大きな違いが出てくるからである。


  つまり、赤道直下のカリマン島のキナバル山の1000mから2000mに
  発生する午後からの霧と熱帯の島の標高100から500mに発生する朝霧。
  この二つには、大きな違いがある。
  又、氷点に近い温度で発生する霧にも大きな違いがあり、
  それは「結露」にも関係する。
  日本では9月初旬の「白露」の季節という明確な露を結ぶ季節の変化があり、
  朝霧が発生するようになる。秋の到来である。
  こういう状態が、熱帯の高山に自生するパフィオの自生地にも見られる。
  赤道に近い地域では四季の変化がないように考えられるが微妙な変化がある。
  北半球の冬の太陽の微妙な高度変化によるものである。
  更にモンスーン気候が重なり、乾期が重なると大きな変化になる。
  北緯25℃にもなれば相当大きな変化になる。
  パフィオの自生地は、この緯度の変化と、標高の変化、モンスーン気候の変化が
  もたらす変化の中にある。更に局地的な変化の共通点に自生地を見ることが出来る。
  これはCymbidiumにも見られるものである。
  
  夕霧の発生。
   熱帯の林。
   そこに聳える高山。カリマンタン島の独立峰4000mのキナバル山。
   1200種のランが自生する。
   山の裾野の広大な樹木の自生地。
   日中、太陽の熱で温められ山肌を上昇する。
   ある高さまで上昇すると、温度の低い空気に触れて、霧が発生する。「結露」。
   だから、きまって午後の3時頃以降に霧が山を覆う。

  この状況の中でのランの葉の温度変化を考えなければCymbidiumもパフィオも作れない。
  つまり、太陽に光によって温まる自生地の麓の森林、樹海の大氣の温度上昇。
  その大氣が山の斜面を登ってくるときの大氣の生動。
  それをランの多くはDNAに取り込んで光合成している。
  熱帯の高山に自生するランに共通したものである。
  アンデスの高地に自生するランもほとんど同じ。

  このようなところに自生するランに暖房を夕方開始するのが、実際のラン栽培。
  暖房機は乾燥機である!!
  温風暖房機で温かい空気を作るということは・・・・これまでの空気に熱を加えることである。
  これは、前記の山肌を登って空気が冷やされるのと、逆の温度管理になる。
  棚が高い場合ほど乖離が大きくなる。
  Cymbidium、パフィオでは、栽培棚が非常に大きな問題になる。
  熱を含んで乾燥した空気は上に昇るからである。
  あの「熱気球」を想像すれば理解出来よう。
  この理由で、イギリスの温室は「半地下式」で、棚は外の地面とほぼ同じ高さ。
  少なくとも、夕方、内張りにうっすらと「結露」していなければ、
  Cymbidiumもパフィオも良く出来ない。
  夕霧が本当に発生すれば・・・・花のある別なランには問題が起こるから・・・・・。
  午後から高い温度の水蒸気の潜熱を含んだ湿度の高い空気の昇る場所。
  そこはランの自生地ではなく、他の植物の自生地である。
  霧が発生する場所ころ、プロトコームが生きられる場所である。
  そういう場所でのみランは自生することが出来る。
  

  朝霧の発生。
   温かい海、海流。 樹海にこもる温かい空気。
   つまり高い温度の水蒸気を{潜熱」としている空気に、高い山から・・・・・
   おりてきた冷たい空気が触れた時霧が発生する。
   冷たい温度の水蒸気が含んだ潜熱の空気がおりてくる場所。
   霧が溜まる場所、発生する場所。
   そこでプロトコームは生きられる。
   
   ヒートアイランドになった東京に朝霧が発生しなくなった。
   杉花粉は飛んでくるが、静かに流れおりてくる冷気が、都心まで届かない。
   日本のラン栽培地で、最も悪条件である。
   そういう意味で、東京はラン界の中央ではない。
   一番の僻地である。
   墓場である。

   この朝霧がもたらす、緩やかな葉の温度の上昇。
   散光による柔らかい光。
   霧がもたらす水。
   アナナスも乾期の時は、この霧の水を溜める。
   パフィオも・・・この霧の水を保存する。
   アンプ病などかからないように出来ている!!
   
   ここまで書けば、宇井清太が何回も書いている紫外線カット、散光、
   葉の温度の検温の理由が理解できよう。

   更に、この朝霧にしろ、夕霧にしろ、冷気を含んだ大氣の水蒸気は、
   温室の狭い空間の空気のように急激に上昇しない!!
   CAM型のパフィオ、Cymbidiumは、この条件下で生きられるように進化した。
   非常に少ない根の水の貯蔵。
   地生ランのパフィオであっても、乾期の乾燥は厳しいことに変わりはない。
   程度の差があるだけである。


  Cymbidiumもパフィオの温度管理で、最も錯覚するのは、
  温度計の目盛りを信じることである。
  葉の感じる温度でもなければ、葉の温度でもないことである。
  ランの本には、これまで一度もこの葉の温度について書かれたものはない。
  前記したように、温度計が20℃でも葉の温度が35℃ということがあるということ。
  この温度は、紫外線カット、散光でも、遮光でも根本的には防ぐことは出来ない。
  時間を少し遅らせることは出来るが・・・・・・。
  それでは・・・・どうする。
  ここが、Cymbidiumとパフィオ栽培のポイントである。
  種ごとの朝の最低温度より、2、3℃低い温度にするように換気する。
  Cymbidiumでは、朝の最低8℃の栽培では、
  早朝、サイドの窓、天窓を開いて、一度6℃程度まで室温を下げ、
  そこから・・・自然に温度が上昇するようにする。
  このような温度管理では、葉の温度上昇速度は自生地と相当似たようになる。
  この場合の条件として40%遮光、紫外線カット、不織布による散光にして、
  太陽光による急激な温度上昇を防ぐことである。

  冬至の東京の太陽光の入射角が約31度である。
  夏至の入射角が73度。
  この理由で、光が弱いから、遮光を外すことが行われているが、
  相当大きな勘違いである。
  霧による散光の時間を考慮する必要がある。
  常緑の樹木の森であれば・・・・当然木漏れ日の光での散光である。

 
   
    
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