Cymbidiumの葉と似た植物に「・・・・ラン」と呼ばれているものが多いが、それらはラン科植物で 
はありません・
 君子ラン、葉ラン、マツバラン、オリズルラン、ニュウサイラン、リュウゼツラン、ヤナギラン・・・。
立ち葉
シンビの葉と似た植物の名前
カトレアは毎年咲くのにシンビは毎年咲いてくれない・・・・。このような話を多く聞きますが、上の図をよく見るとカトレアは頂芽が花芽になりリードになる主芽が花芽になることはない。シンビはリードになる主芽が花芽になる。シンビで1バルブに2本も花立ちした場合はリードになるべき主芽が花芽になるのでリードは副芽になる。副芽は飽くまでもピンチヒッターですので大きいバルブに育つことは無い。生育も遅れるので花芽は分化しないことになる。シンビが毎年咲かない主な理由である。
副芽
副芽
主芽
主芽
休眠芽
休眠芽
バルブ
 頂芽 花芽
シース

Cattleya

Cymbidium

休眠芽
休眠芽
休眠芽
主芽 花芽
主芽 花芽
副芽
副芽
主芽 花芽
休眠芽
休眠芽
休眠芽
頂芽
シンビは葉の基部に芽があります。シンビの芽には副芽、主芽、休眠芽、頂芽の種類があります。
副芽は主芽がダメになったときピンチヒッターの芽です。主芽は花芽、リードになります。休眠芽は非常事態のとき発芽します。頂芽は進化の初期には花芽になる芽でしたが、シンビは主芽が花芽になると休眠芽になった。
−6月頃親株からバックバルブをはずし植えると、1−2ケ月後に休眠芽が発芽し生長する。この苗を培養すると数年で開花するようになる。6月以降のバックはずしでは発芽しない場合が多い。
新しい苗
バックバルブ
ランの種族保存は種子、バックバルブで行われます、シンビの原種の中にはリゾームをさらに加えているものもあります。バックバルブはシンビでは3年以前のバルブです。
メリクロンが出来るまでは、優良品種の増殖はバックバルブからの繁殖が主に行われていました。現在でもメリクロンの出来ないランではバックからの増殖です。パフィオなどがその例ですが、ランが「高嶺の花」といわれた時代は、バック繁殖時代だったからです。シンビのメリクロンは一つの芽から一年間に数万本の苗を作ることが出来ますので、苗の値段を数万分の一まで安く出来るのです。

貴重な品種は現在でも品種保存の一つの手段としてシンビでも行われています。メリクロンでは時に変異することがあるからです。また、メリクロンの弊害として品種の貴重性が失わせるので、メリクロンをしない品種も多くなりました。このような株ではバックからの増殖になります。
 バックバルブからの再生
 葉の枚数と花
シンビ栽培で最も問題になるのが「花が咲かない」ことです。
シンビには前記したように原種、園芸品種で最多の葉の枚数はおおよそ定まっているのです。この最多の枚数の時素晴らしい花が咲くように出来ているのです。この枚数に生育出来ない場合は花は咲かないことになります。
シンビの葉は前記したように雨期に栄養生長し止め葉が出て生長を終止しますが、雨期の期間は約6ケ月です。この期間内に品種によって6枚、8枚、10枚、12枚、14枚と生長しなければならないのです。つまり、6枚で花芽分化する品種が5枚で終った場合は花芽が分化しないことになります。

ここで問題になるのが、それではシンビは1ケ月に何枚生長出来るかということです。
シンビは1ケ月に平均すると約1,5枚生長します。
自然に作った場合栄養生長期間は6ケ月ですので  6x1,5=9  つまり9枚の葉が出来ることになります。
12枚、14枚で花芽が分化する品種花は咲かないことになります。このように葉の数の多い品種は、春から新芽が伸びたのでは秋までに間に合わないので、このような品種は春から新芽が伸びるのではなく、6−9月から伸び翌年の6月頃止め葉が出て終止します。
つまり、シンビは一つの生育パターンで進化したのではなく、多様な生育パターンで進化しましたが、それも自生地の環境条件の下で生育、繁殖するためのものです。シンビの園芸品種では、生育パターンの異なる多くの原種が交雑されているので、兄弟株であっても全然異なるパターンの場合が多いです。 

新芽の出る時期を早くすることができる・・・・?
自然に作った場合は前記のように品種によって新芽の生長開始時期が定まっていますが、栽培技術で生長開始時期を早い時期から行うようにすれば葉の枚数を多くすることが出来ます。
フラスコより出して高温栽培、多肥料栽培すると、シンビは生育パターンを狂わせ、本来春に新芽を出し生長開始する品種でも秋に生長開始するようになります。このようにして作られているのが店頭で販売されているシンビの鉢物です。何本も花が咲いているのは、このようにして作られたからです。
シンビがこのように作ることが出来るのは苗から作った場合のみ可能で、一度でも咲いた株では不可能になります。バックバルブからスタートしなければなりません。
 
 葉は1ケ月にどれ位生長するの・・・・?
細胞融合する場合裸の細胞プロトプラストを作らなければなりませんが、シンビの葉でも作ることが出来ます。
ペクチナーゼで細胞をバラバラにし、セルラーゼで細胞膜を融かすと葉の細胞プロトプラストが出来ます。
 葉細胞のプロトプラスト
多くの植物で葉からの再分化が可能ですが、シンビではメリクロンの研究過程で葉からのプロトコーム発生の可能性が研究された。ランの中にも葉からプロトコームが出きるものがありますが、シンビでは発生は見られなかったようです。シンビは生長点が多くあるので、メリクロンが容易なので葉からの研究は積極的に行われなかったようです。
 葉細胞の再分化
前記の倍数体も一つの変異ですが、シンビには「斑入り葉」の突然変異があります。東洋ランのシンビでは「葉の芸」として細かく分類しております。斑入りの突然変異には先祖返りがあり基本の葉に戻るもの、あるいは葉緑素の全然無い葉になる場合があります。
 葉の変異
シンビには2倍体、4倍体、3倍体、6倍体などの個体があります。基本は2倍体(2n)染色体数40です。倍数体については、「Vol−1花のすべて」で記していますが、葉にも大きい差違があります。倍数体の個体は2nに比し細胞が大きいので、葉も大きく、長く、葉幅が広く、葉肉も厚いです。栽培するとき錯覚するのは、2nに比較して非常に生育が良いように見えることです。2nの個体が10cm生長するとき倍数体の個体は15cmも成長するからです。
若い株の時は非常に強健に見えますが、日本の夏は身体が大きいので呼吸作用も大で、消費も大きく老化も激しくなるのが普通です。倍数体個体の中には、非常な強健個体があり、バナナ、鬼百合などは神が作った3倍体個体ですが、2nでは見ることが出来ない強い性質を持っています。
シンビでは人為的にコルヒチンを用いて4倍体(4n染色体80)を作り、3n(染色体60)を作りました。シンビでも株の大きいものが多いです。
 葉と倍数体
シンビの葉の害虫に貝殻虫、アカダニ、ナメクジなどがありますが、「みんなのパビリオン」の栽培法で記していますのでご覧下さい。
 葉の害虫
シンビの葉の病気は数種類ありますが、共通することは病気が発生してから薬を散布してもほとんど効果がないことです。作物では栽培技術の中に薬剤散布は非常に重要なもので、例えば、バラ栽培では30回も薬剤散布することもありますが、シンビ栽培では「気休め」なのです。シンビ栽培では病気が出たときは、薬を撒くよりも栽培に間違ったところがないか、環境作りに自生地と異なるところがないか検証するのが大切です。
シンビの病気はほとんどウイルス病以外は株の衰弱で起きるからです。環境がよければほとんど発生しません。

ウイルス病
シンビにはカトレアウイルスとシンビジュウムウイルスの2種のウイルスがあります。カトレアウイルスは花の寿命を短くします。シンビジュウムウイルスは葉の細胞を壊死させ、花にカラーブレーキングを発生させます。 

葉の病気については「みんなのパビリオン」の夏の栽培法で記しておりますのでご覧下さい。
 葉の病気
葉が光を受けて光合成して作られた養分は、日没後速やかに他の器官に転流する。シンビでは転流適温は18℃といわれています。シンビではこのことが非常に重要な意味をもっているのです。シンビの葉は、日中50℃にもなるのです。日本の夏、そのままに何もしない場合は夜の12時でも、葉の温度が30℃を超えているのです。このような高温では呼吸作用が激しく行われ、光合成で作られた養分は呼吸作用でほとんど消費されて生長に使われる養分がなくなります。
この状態が「夏バテ」です。株の活力はおとろえ、根は生長を止め、水分の吸収はよわくなり生きているだけの状態になります。自生地では夕方スコールが降るのです。山風、谷風が発生し、スコールは葉を冷やしてくれるのです。葉の温度を下げるのです。シンビの葉はスコールがもたらす恩恵で生きられるのです。
日中葉を触ってポカッと温かいときは、必ず夕方冷たい水を葉にかけて葉の温度を下げてください。
このようにすると貯金が多くなり素晴らしい花を約束することになります。プロが夏山上げするのは、自生地の条件になるべく近くするためです。趣味の人がシンビを作ると市販されている鉢のように作れないのは、平地では山の環境を作れないからです。
日本の夏は、シンビにとって最高温度も最低温度も高過ぎるのです。

秋朝の最低温度が15℃に下がると、シンビは秋を感じてバルブに養分を蓄えはじめます。冬の乾期に備えるのです。シンビは半年働いて、半年寝て暮らすのです。それが、自然に逆らわないで生きる方法なのです。シンビが進化の過程で得た究極の合理性なのです。この究極の自立した生き方に、人間が余計な事をするのは、シンビにとって迷惑なことで、人間の気休め、自己満足でしょう。

バルブの大きさが、環境条件、栽培技術の良否のバロメーターです。

 炭酸ガスの吸収
植物の光合成のには2種類あるといわれています。このことについては多くの専門書が出ていますので、それでけんきゅうしてください。
問題は、キュウリなどでは朝日が出ると同時に温度を速やかに上昇させ、この時刻に炭酸ガス施肥すると非常に生育がよくなることがしられていなす。シンビではこれとまったく逆で、日の出から6−7時間かけて緩やかに温度が上昇するようにするのが理想です。このときの気孔の開閉に前記に「通気」が密接に関係してきます。自生地の照葉樹林帯の下草が生えている空間に流れる大気の流れが理想なのです。この環境で炭酸ガスの吸収が行われるように出来ているのがシンビなのです。
外に出す場所が木漏れ日の当たるところが理想になります。特に地面に「苔」が生えているところがよいのです。シダが出ているところが良いのです。
 養分の転流
蒸散作用は、シンビは「気を好む」といわれているように、シンビにとって非常に重要なものです。

葉は水分を蒸散することによってはの温度を下げており、シンビの葉は非常に高温になり易く、通気が悪い条件の下では短時間で高温になります。栄養生長期間は蒸散することによって根からの水分の吸収が行われるようになります。根の吸水が衰える休眠期に激しい風、乾燥、高温は非常なダメージを与えます。大気の対流、湿度60−90%、適温(緩やかな温度の上昇)が理想です。
生きた葉の気孔の活動を観察すると、無数にある気孔が全開ということはなく微妙に瞬時に開閉を行って連携しながら行っています。
休眠期はバルブの水分で蒸散しているので、高温は厳禁になります。過度な蒸散が行われる条件は株の衰弱が激しくなります。
葉が成長するのはより多くの光合成を行うためです。前記した全ての構造、組織、機能は光合成を行うためのものです。
植物の光合成については、シンビだけが異なる事はないので、他の本で研究してください。
シンビが光合成する照度は5ルクス以上といわれています。30000ルクスが最高で、それ以上の照度では減少するといわれています。温度では28℃ほどで、それ以上高い温度では減少し、呼吸作用が激しくなり合成より消耗が多くなると言われております。
シンビの自生地には春夏秋冬があり、その季節の環境があり、その環境条件下で光合成、呼吸作用の良いバランスで生存、繁殖が行われるように進化した。
シンビは未だ「作物」まで改良がなされていないのです。未だ自生地の「植物」なのです。
シンビには前記したように春に生長を開始するもの、秋に開始するもが基本ですが、原種の中には不定期に新芽が生長開始する駿河ランのようなものもあります。
シンビには不定期に生長開始するものがある。
生長終止期
花芽分化期
生長最盛期
休眠、少し生長
新芽の生長開始
--------
--------
--------
11−3月
 乾期
9−10月
 雨期
6−8月
 軽い乾期
4−5月
 雨期
シンビの新芽の生長開始時期は自生地の雨期を大きく関係し、雨期の雨水を吸収して開始します。温度の上昇も大きく関係します。シンビは前記したようにモンスーン気候の下で進化したランです。シンビの多くの原種はヒマラヤのダージリンなどです。4月に雨期が始まります。多くの原種はこの時々降る雨水を吸って生長を開始します。この時期は生長できる温度になっているのです。日本原産の日本春ランも春がきて温度が上昇し、春雨の雨水を得て生長を開始します。

シンビには秋に生長開始するものがある。
シンビの原産地には秋に雨期の始まるベトナムのアンナン山脈もあり、ここに自生しているerythrostylumは秋の2度目の雨期の雨水を吸収して生長開始します。

シンビは3年も生きて働くと「落葉」します。これは自然の法則で葉が「老化」して光合成する能力が劣るようになると、新しい葉が活動する空間を与える意味で落葉します。
葉の名称、葉の基本図を見てください。葉は対生で180度で展開します。新しい芽の葉は前年の葉に対して90度の角度で展開するのです。葉が5年も6年も生きた場合は新しい葉の伸びる空間がなくなってしまうのです。

シンビは以上のように若い葉に席を譲るようにして主に乾期の始まる秋に落葉します。
落葉は「離層」のところにアブシジン酸というホルモンが生成し、癒合細胞がつくられ落葉の準備をします。葉の養分はバルブに移行しやがて落葉します。

離層は病菌からバルブを守る・・・・?
上記の落葉は「天寿」をまっとうした場合のパターンで、葉の多くはそれ以前に落葉することが多い。離層は葉の病気を葉を落とすことによってバルブにまで感染することを防ぐ。
葉にとって自然は「優しい」ことより過酷なまでにきびしいものである。特に葉に病気がかかった場合は、癒合ホルモンの生成が行われ葉を落としてバルブを守る。しかし、シンビの平行脈は細菌の移動が容易で、病菌によっては、落葉する前バルブまで繁殖してしまうものもある。株腐れ病などはこのようにして株全体が全滅する。

ワックス、クチクラ層、離層の3重の安全機能を突破する病菌は多くはないのですが、前記したように春に葉の温度を温めた場合などは、梅雨期に株ぐされ病に侵されることが多くなる。自生地にない環境では致命的な病気が発生することがある。


シンビの葉色は品種によっておおくの差違があります。一つとして同じ色はないのです。
一番大きい違いはアルビノと普通の葉の違いです。アルビノには細胞にアントキアン色素がないので深緑色の葉はありません。普通種には葉緑素とアントキアン色素などがあり、この組み合わせで葉の色は出来ているので品種の「色」がでることになります。

環境が良く、株が健全であれば品種本来の葉色ですが、同じ品種であっても作る人によって異なるので、どの葉色が品種本来の色なのかわからないのが実情です。

弱い光線下で窒素が多い葉は濃い緑になります。
強い光線下で窒素が少ない葉は黄緑になります。
肥料で根が腐った株の「小苗」は深い緑になります。大株では黄色に近い緑になります。

erythrostylum系の品種では、新葉で完成しない幼葉では葉緑素に濃淡があり葉色が斑になるものがあります。ウイルス病ではありません。
シンビの葉は3年生きるのですが、古くなるにしたがって黄緑になり光沢がなくなります。細胞が「老化」するためです。
日射による日焼け
シンビの葉には前記の紫外線、赤外線などの光、乾燥から細胞を保護するためにクチクラ層が具備されています。
クチクラ層の限界を超えた強い光は細胞を短時間に破壊します。「日射病」です。潅水後の水滴に光が当たって日焼けする場合もあります。外に出した数日は注意する必要があります。葉の表面が破壊される場合と、葉の裏まで破壊される場合があります。株全体に及ばないで葉の一部で止まる場合が多い。
熱射による日焼け
葉の温度が高くなって日焼けを起こします。通気の悪い状態で光が強いと葉全体黄色になって弱ります。非常に大きいダメージを受け、株全体が弱ります。当然根の活力も弱ります。
葉の温度は光合成出来る温度です。
葉は−3℃で枯死します。細胞が凍結して破壊されるためです。死滅する最高温度は短時間では60−70℃程度。長期ではシンビは直射光線下では50℃以上にもなりますが、通気の良い状態であれば耐えることができます。逆に通気の悪い状態では30℃でも非常大きなダメージを受けます。シンビの一番注意しなければならないのはこの点です。
光合成を行う最適温度は28℃程度といわれています。この温度は室温ではなく葉の温度です。ランの本には室温のように記されていることがありますが、前記したように室温28℃でも通気が悪いと、はの温度は50℃にもなるのです。
光合成できる温度は3−40℃の範囲のようです。
葉の温度で問題になるのが、最低温度から最高温度までの時間です。自然界では5−7時間かかって最高温度に達します。シンビの温度で最も重要なのがこの上昇時間なのです。温室栽培では特に重要になります。
フラスコ培養では25℃以上の培養温度では非常に衰弱します。
シンビの進化は多様で、リゾーム状態でラン菌との共生で栄養代謝を行うものがあります。他のランでは「土あけび」があり、ランの進化の過程で、ラン菌との共生を最後まで残して光合成を必要としないシンビができました。
このリゾームは春ラン、カンランにあり、春ラン、カンランでは、種族保存の一つの機能として具備しています。地上部が寒さで全滅しても、地下深く保存されたリゾームは発芽して絶滅を防ぐのです。このとき葉は枯れてもリゾームはラン菌との共生で腐植から栄養を摂り生き、春に芽を出します。このリゾームのある場所を東洋ラン界では「坪」とよんでいるようです。

プロトコームから発芽の段階で葉の発生は無く、リゾームが形成されます。
春ラン、カンランのフラスコ培養では、10年もリゾームで生きたものがあります。この場合、培養基に含まれる「糖分」がラン菌の供給する「養分」になります。

葉の幅と自生地の光の量、質には密接な関係があり、紫外線が少なく弱い光の場所に自生しているものは、葉の幅を広くします。光が強く紫外線の多い自生地では一般に狭くします。栽培条件では肥料を与えたものは広くなり、無肥料の葉は狭くなります。
前記したように、シンビの葉は光合成と雨水を根元に集めるという二つの機能を持たなければならないので、自生地の諸条件の中で合理的に二つの機能を満たすために多様な葉姿にしんかしました。
光の状態、空中湿度、気流、霧、雨の降り方、雨期乾期の状態、地生、着生・・・・などで葉の姿を変えています。
交配種では、複雑に交配されていますので、品種によって千差万別になっています。

   発芽から1バルブまでの葉については、メリクロンのところで詳しき記します。

シンビは自生地ではスコールを「天の恵み」として生きている。慈雨なのである。シンビはスコールなしでは生きられない。
シンビの葉は雨水に含まれている養分を吸収する。スコールには「尿素」が含まれているが、根からの吸収に加えて葉からも吸収して生育する。無駄なく利用するようになっている。
他の植物でも行われ、これを利用して養分の「葉面散布」が行われているが、シンビの苗では効果がある。
 落葉と離層
シンビの本葉は数枚から10数枚まで品種によって差違があり、10数枚の品種であっても環境条件、栽培条件の違いで本葉の枚数は大きく異なってきます。
シンビの本葉は、原則的にはモンスーン気候の雨期の期間、つまり4月から10月までの約6ケ月180日が生長期間です。この限られた期間の中で葉の枚数を多くするのですが、シンビは単子葉植物で草本ですので樹木のように年輪を作って年数をかけて大きくなるのではありません。一年でその生長を完結させるのです。前記の図で示したように最後の葉「止めは」を出して最後の生長になります。カトレアではこの止葉が本葉なのです。カトレアには止葉一枚で生き、花を咲かせる原種がおおいです。シンビは本葉の多い分栽培は難しく、花が咲けば長い期間咲き続けます。

本葉の枚数は前年の出来で決る!!
本葉の数は新芽が5cm程度伸長した時期に決定しております。前年の栄養状態がよければ大きい芽が形成されます。この芽の生長点の葉原基組織が細胞分裂して葉が形成されますが、この細胞分裂のエネルギーはバルブに蓄えられた前年の養分で行われるからです。前年の株の成績で葉の枚数は左右されます。
シンビは一年上手につくっても花は咲かないのです。少なくとも3年継続して上手に作らなければならないのです。一度落ち込んだ株は容易に立派な株にはならないのです。少なくとも数年が必要になります。
シンビは量産されているので栽培が簡単に想いがちですが、一度花が咲いた株を翌年も素晴らしく咲かせる事は本当に難しいランなのです。
 葉の色
シンビの葉には樹木の表皮のクチクラ層があります。クチクラ層は松ノ木の皮・・・・の組織です。前記したように、シンビにはワックスがあり少しの多湿、乾燥、病菌から葉を防ぐ事が出来ますが、さらに強い安全組織としてクチクラ層を準備しています。
クチクラ層は強い紫外線から葉を守る。多くの植物にとって紫外線から身を守ることは最大の問題なのです。
この細胞は葉の表面に数層重なっているものですが、光の弱い条件下ではクチクラ層の発達は貧弱になります。クチクラ層は葉の完成、充実にともなって機能は充実する。シンビの葉は秋から休眠中に徐々に完成し、翌年の春から最高に光合成することになります。これに合わせてクチクラ層が出来上がることになります。
クチクラ層には非常に多くの珪酸があり、古い葉には珪酸(ガラス)の結晶が見られるようになります。イネ、カヤ・・・などと同じような葉になります。
 葉の養分吸収
    
 葉のクチクラ層
シンビの葉が生きるには、自生地も、栽培温室でも、常に良い条件ではなく、むしりろ悪い条件の日のほうが多い。
強い光、強い風、強い雨、乾燥、多湿、高温、低温、病菌・・・・・。
植物は受身の進化なので、環境が悪くとも動物のように移動出来ません。悪い環境に耐えることが出来るように組織、機能を備えることになります。その一つに葉のワックスがあります。

葉のワックスは、雨水が直接細胞に付着しない、乾燥から葉を守る、病菌の繁殖侵入を防ぐなどの働きがあります。多くの果実にもあり、果実では雨水を吸収して起こる裂果を防ぎます。シンビ果朔にも多くのワックスがあります。乾燥防止の働きではネギ、キャベツ、チュウリップ・・・などでみられます。カビ、細菌は多湿、水の中で繁殖するものが多く、ワックスがあれば、水の表面張力で葉を濡らすことはない。水滴となって株元に流れ落ちる。
シンビの葉が水に浸かった場合は数時間は耐えるようですが、それ以上の時間ではたえられないようです。汚水ではフザリュウム菌などで葉は侵されます。
ワックスは、空中湿度が70−80%の適湿であれば発生は少ない。生育不良、肥料あたりなどで株が衰弱している場合でも発生は少ない。健全に生育している株が乾燥に見舞われたとき最も多くのワックスが発生する。新しい葉、前年の葉に多く発生し、前々年の葉には発生は少なくなります。
 葉と蒸散作用と通気
シンビの葉に重要条件は空中湿度です。
シンビの葉は非常に空中湿度に敏感で、過酷な変化は好みません。密やかな湿気を非常に好みます。モンスーン気候の照葉樹林帯の下草、着生ランとしてのシンビは四季を通して70−80%程度の空中湿度をこのみます。
前記の温度較差では、四季を通して夜露画あり、秋には深い霧が発生します。シンビは夜露、霧の水分を葉、露根で吸収するように進化しています。
前記の通気を図るとき、この空中湿度を保ったまま行うのが理想ですが、特に日本の春は難しいです。。
 シンビの葉の最適な空中湿度
 光合成
シンビのほとんど原種は温帯気候に自生しております。モンスーン気候の温帯の気温の温度較差は大体13℃前後です。
この範囲の中で生存出来るように進化しています。
シンビの最適な温度較差は
 冬期・・・・最低5℃   最高18℃      春期・・・・最低8℃   最高  20℃
 夏期・・・・最低15℃  最高28℃      秋期・・・・最低10℃  最高  23℃

前記したように、自然界では、最低温度から最高温度まで6時間程度かかって最高温度に達する。問題なのは、温室栽培では、短時間で最高温度になってしまうことです。冬期の休眠期に急激な温度上昇は厳禁で、葉に悪い影響を与えるだけでなく、花にはシミが発生し、受粉したものは流産してしまいます。交配したときは、特に急激な温度上昇は避けなければなりません。
砂漠に近くなるほど温度較差は大きくなりますが、シンビはモンスーン気候の温帯に自生しているので、大きな温度較差は厳禁になります。

シンビで非常に重要な条件が気流です。温室では通気です。これはシンビの呼吸作用、光合成、蒸散作用と密接に関係するからです。シンビを栽培して経験上わかることは、通気不良で朝に葉が高温になった場合は極端に株が弱ることです。温室で風をまわしたような空気の動きでは良く出来ないのです。温室に外の空気を入れないとだめなのです。気の流れが必要なのです。自然界では山全体の気が流れるのです。「気韻生動」がシンビに必要なのです。
これはシンビの「気孔」の働き、開閉に関係しており、特に冬期の休眠中の気孔の働きは、水分の消耗を抑えるために「開かない」状態に、通気が悪い状態で光が当たれば、急激に「内熱」が出た状態になります。休眠中は休眠の温度があり、この温度を通気で調節するのが自然です。夏は外に出したり、温室はサイドを開けますので自然に通気します。それでも室内よりは外で大きな気流の動きの中で栽培したほうが良く出来ます。
 シンビの葉のワックス
イネの葉には葉耳、葉舌があります。同じイネ科でもヒエには葉耳、葉舌はありません。シンビの葉とヒエの葉は同じ姿をしています。
ユリの葉は・・・・?
 次回予告
  Cymbidiumのメリクロン
 新芽の生長開始の時期
 葉の日焼け
光の量
 シンビの葉が最も多く光合成する光量は20000−30000ルクス程度です。原種、品種によって最適な光量にも多くの差違があります。日本での栽培は、四季の変化で光量も大きく異なるので、季節によって日除けの程度を変える必要が出てきます。夏の晴天は50000ルクス以上あるからです。
光の質
 シンビの好む光は紫外線の弱い光です。光には7色の光のほかに赤外線、遠赤外線、紫外線、x線、・・・・など多くの光線があります。ランの本で最も欠落しているのが光の質の問題です。現在フロンガスが禁止されたのはオゾン層の破壊が、強い紫外線が地球に降るからです。人間にもシンビにも最も害を与えるのが紫外線です。日本では夏に日傘をさしたのも紫外線です。サングラスをかけるのも紫外線があるためです。
紫外線は植物を老化させますので、花芽分化には適度の紫外線が必要になります。花を咲かせたい場合は少し紫外線をあたえることになります。
シンビは種族保存するときリゾーム、バルブ、種子の3種類で行っているので、必ずしも花は咲かなくとも良いのです。前記のリゾームで生きているシンビ(マヤラン)では紫外線は必要ないのです。植物の進化を考える時、紫外線が強い時代は、紫外線の届かない水の中で植物は生息していたのです。リゾームは陸上でそれを行っているのです。ラン菌の力を借りて・・・。
 葉に最適な温度較差
 葉と気流
シンビの新芽の伸長開始、生長と終止には自生地の雨期、乾期が大きく作用しています。原産地の雨期、乾期に合わせて行うように進化しました。
ヒマラヤ系の多くのシンビの原種は、ヒマラヤ地方の雨期は4月に始まり9月下旬に終るので、この雨水とそれに含まれる養分で生長するようになっています。自生地のモンスーン気候のもたらす午後からのスコールの雨水、湿度で生育出来るようになっています。夕方の潅水がシンビに重要なのはこのためです。10−3月まで乾期で雨はほとんど降りません。
 葉と雨
 葉と光
 葉と温度
春に芽の出るシンビの止め葉
 シンビの多くは春に新芽が出で、秋まで葉の枚数と長さを増し、秋9−10月頃止め葉が出てバルブを形成して量的拡大を完成させます。止め葉の出る時期と花芽の分化には密接な関係があり、止め葉が出る時期に花芽が出来ます。
秋に芽の出るシンビの止め葉
 シンビの原種の中には、秋に新芽を出し栄養生長をスタートさせるerythrostylumがあります。シンビの進化は巧妙で、erytyroの原産地はベトナムですが8−9月に雨期がある場所です。この秋の雨期に新芽が出るようになっています。erythroの自生地の冬は比較的高い温度なので、少しづづ生育し、6月に止め葉が出て花芽分化し秋に開花する。
シンビの原種にerythroがあったので、現在のシンビの多彩な花、長い花期が生まれた。つまり、erythroと春咲きのシンビを交配することによって自然界ではない11−3月咲きのシンビを創ることが出来た。
 止め葉
葉の質
シンビの葉は自生地の条件で多様な変化をしていますが、葉の質に置いてもリカステのような葉、カヤのような葉、革質のカトレアのような葉まで多様です。自生地が広く環境じょうけんが大きく異なるので、葉の質はそれに適合するように進化しました。カヤのようにガラス質の多いもの、カトレアのようにクチクラ層を極度に発達したものがあります。
 葉の無いシンビ
 芽の種類と位置
 葉の幅
シンビの進化は非常に多様で、小型から大型の原種まであり、葉の長さにも大きな変化があります。自生地、栽培条件によっても大きく左右されますが、30cm程度から1m以上まであります。栽培条件では、光が弱く、多湿条件では一般に葉は長くなり、強い光の下で通気が良く乾燥気味の条件下では一般に短くなります。
 葉の長さ
シンビの進化には多様な方向があって、光合成しなくとも生きられる腐埴性Cymがあり(    )、この原種には葉ありません。他の原種では数枚の鞘葉と数枚から10数枚の本葉です。この葉は1シーズンで止め葉が出て完成するものと、2シーズンのまたがって完成するものがあります。
原産地の環境条件の違いが進化に作用して、多様な方向になりました。葉の枚数と花芽の分化には密接な関係があります。後述します。
 葉の枚数
垂れ葉
直立葉は真上からの光が当たらない。直立葉の品種には真上に日除けして周りからの散光を当てる。直立葉の品種は鉢の間隔を広く取る。
垂れ葉は多くの光を必要とする。そのために受光面を多くするために垂れ葉になった。

 1 直立葉
 2 垂れ葉
 3 半直立葉
 葉姿の種類

 シンビの葉は
  1 散光を有効に受けて光合成を行う。
  2 雨水を株元に集める。

 本葉枚数の決定時期
左の図は1、2、3、4のバルブの葉は90度の角度で対生するため重ならない状態をしめす。
90度の角度で展開するため整然とした秩序で株全体の葉姿が形成される。

この理由は、自生地の「散光」を3代にわたるバルブの全部の葉が有効に受けて光合成するためである。

葉は漏斗の役目を持ち雨水を株元に集めることができる。
 新芽
 葉
 90度
 葉
 90度
 バルブの中心線
 新芽
 葉
 葉
 新バルブ
 90度
 葉の重なりの基本図
 葉
この葉の隙間に散光が入る
この葉の隙間に散光が入る

 本葉 完全葉

 本葉 完全葉

鞘葉・・・・離層のない葉を不完全葉又は鞘葉という。
本葉・・・・葉鞘、離層、葉身を備えた完全な葉をいう。
止葉・・・・本葉の最後の葉をいう。

理想的に生育した株では、本葉の長さに図のように整然としたリズムがある。

葉の伸びる角度は丁度「漏斗」のようになっており、葉で受けた雨水を株元に集めるようになっている。

Cymbidiumは180度の対生でバルブの両側に葉がある。

第一本葉と第三本葉の間には空間があり、この隙間は散光が全部の葉に当たるようになっている。

これは、自生地は霧の中の光で散光であるため、弱い光を有効に使うためのものです。
鞘葉 ハカマ
第一本葉
第三本葉
第五本葉
第七本葉
第九本葉

第十本葉 止葉

第八本葉
第六本葉
第四本葉
第二本葉
鞘葉 ハカマ

 大株の葉 全体像基本図

 葉の容姿の基本図

 Cymbidium 葉の全体像

平行脈---------
 葉舌
 葉身
 葉耳
 離層
 葉鞘
-------平行脈
 葉身
 離層
 葉鞘
 イネの葉

 Cymbidiumの葉

ラン科植物は植物の分類から見れば「単子葉植物」に属します。
ランは植物進化の頂点に位置し、ランの祖先はユリのと考えれれており、虫で受粉するように進化したのが「ラン科」で、風で受粉するように進化したのが「イネ科」植物といわれています。ラン科の葉とユリ科、イネ科植物の葉に多くの類似点、構造があるのはそのためです。

 Cymbidiumの葉と名称

 Vol−3

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