掬粋蘭花 Vol−4 掲載
 
  石川やせみの小川のきよければ月もながれを尋ねてぞすむ       鴨長明        新古今集
  西行のさくらありわがさくらありて小さけれどもわがさくら咲く        馬場あき子     雪鬼華麗 
操 春みじかし何に不滅の命ぞとちからある乳を手にさぐらせぬ        与謝野晶子    みだれ髪
耽 春の夜の夢の浮橋とだえして峰にわかるる横雲の空             藤原定家     新古今集
  空さむみ花にまがへてちる雪にすこし春ある心地こそすれ         清少納言   藤原公任
  ああ皐月仏蘭西の野は火の色す君もコクリコわれもコクリコ        与謝野晶子      夏より秋へ
MOG95−108
 Beauty Fanfare
  なべてなき黒きほむらのくるしみは夜の思ひの報いなるべし   西行   聞書集
颯 青山を横ぎる雲のいちしろく我と笑まして人にしらゆな            大伴坂上郎女     万葉集
優 いとどしく面影に立つ今宵かな月を見よとも契らざりしに            源有仁         金葉集
  君恋ふる心は千々にくだくれどひとつも失せぬ物にぞありける        和泉式部     和泉式部集
  夜もすがらもの思ふころは明けやらぬ閨の隙さへつれなかりけり        俊恵         千載集
婉 梅の花あかぬ色香もむかしにておなじ形見の春の夜の月           藤原俊成女      新古今集
雫 吾を待つと君が濡れけむあしひきの山のしづくぬにならましものを       石川郎女       万葉集
豊 恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽くしてよ長くとおもはば          大伴坂上郎女      万葉集
  今はとて天の羽衣着る折ぞ君をあわれと思ひ出でぬる             竹取物語    かぐや姫昇天 
  白雲とみゆるにしるしみ吉野の吉野の山の花ざかりかも            大江 匡房       詞花集
MOG95−255
 Arcadian Promenade
  村雨のふる江をよそに飛ぶ鷺のあとまで白きおもだかの花   正徹    草根集
  夢の逢ひは苦しかりけりおどろきて掻き探れども手にも触れねば       大伴家持     万葉集
  うらみ侘びまたじいまはの身なれども思ひなれにし夕暮れの空         寂連法師     新古今集
  今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな          素性法師     古今集
  紫草のにh0おへる妹を憎くあらば人妻ゆえに我恋ひめやも           天武天皇     万葉集
  君がため手力疲れ織りたる衣ぞ春さらばいかなる色に摺りてば好けむ    作者未詳      万葉集
  天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも            安部仲麿      古今集
  いざ今日は春の山辺にまじりなむ暮れなばなげの花の影かは         素性法師      古今集
  来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ          藤原定家      新勅撰集  
 色見えで移ろふものは世の中の人のこころの花にぞありける           小野小町      古今集  
MOG93−396
 Flower Breeze
  若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴きわたる  山部赤人    万葉集
  沖つ風ふきにけらしな住吉の松のしづえをあらふしらなみ             源 経信       後拾遺集
凄  忘れじの行く末までは難ければ今日を限りの命ともがな              高階貴子      新古今集
  思ひあれば袖に蛍を包みてもいはばやものをとふ人はなし             寂連        新古今集
  かにかくに人は言ふとも若狭道の後瀬の山の後も逢はむ君        大伴坂上大嬢        万葉集
  目のまへにかわる心を涙川流れてやとも思ひけるかな              江侍従         金葉集
  名にしおはばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと          在原業平        古今集
  行きくるる雲じのすえに宿なくは都にかへれ春のかりがね           兼好法師    兼好法師歌集
   かくとだにえやは伊吹のさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを          藤原実方      後拾遺集
  みかきも衛士のたく火の夜は燃え昼は消えつつものをこそ思へ         大中臣能宜     詞花集
MOG95−222
 Sachiko Love
  梅の花夢に語らくみやびたる花とあれ思ふ酒に浮かべこそ   大伴旅人    万葉集
  勅なればいともかしこし鶯の宿はと問はばいかが答へむ              紀貫之女    拾遺集
  心にもあらで憂き世に長らへば恋しかるべき夜半の月かな            三条天皇    後拾遺集
  ささらがた錦の紐を解き放けて数は寝ずに唯一夜のみ               允恭天皇     日本書紀
  今はとてわが身しぐれにふりぬれば言の葉さへに移ろひにけり          小野小町     古今集
  見ずもあらず見もせぬ人の恋しくはあやなくけふやながめくらさん         在原業平     古今集
湛  藤波の影なす海の底清み沈く石をも玉とぞ我がみる                大伴家持     万葉集
  玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする          式子内親王    新古今集
   吾はもや安見児得たりみな人の得かてにすとふ安見児得たり           藤原鎌足      万葉集
MOG95−3
  Princess Coat 
   笛竹のただひとふしの声のうちによよのしらべはありとしらなむ          豊原統秋       松下抄
 ほのぼのと春こそ空に来にけらし天の香具山霞たなびく   後鳥羽天皇    新古今集

美のテーマ  掲載歌句    掲載歌俳人     歌句集

yuyu4