CPから1Bまでの栽培法

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この時代のシンビの苗には「実生苗」と「Mericlone苗」がありますが、大きな違いは「Mericlone苗」は性質が解っているが、「実生苗」は何も解っていないことです。したがって「実生苗」の管理は「無理」をしないで腹8分目で作ることです。実生苗には珍品の交配もあり、複雑な交配もありますので、そのように管理しないと枯れる個体が多く、新品種の作出で多くの花を創れないことになります。
もう一つの考え方は、この時代にギリギリの環境を与えて、生き残ったものの中から強靭な性質を持った個体を選抜する方法です。この方法は、一つの目的を持った育種で行われます。生育のよくないものは、コストのかからない小さな時に淘汰する考え方です。シンビの実生はあまりに良花の出る確率が低いので、このような方法が行われています。
細胞の数は同じでも細胞の大きさの差で生育に大きな差が出てくる。
 3,4倍体
 2倍体個体
       実生苗とMericlone苗
苗つくり半作・・・・という言葉がありますが、この時代の苗の管理が、その後の生育に大きく影響します。
栽培を考えると一年でも早く花を見たいですが、早く咲かせて出荷する・・・ことから考えられた技術が高温、多肥栽培です。最大に光合成させる目的の栽培法ですので、光の当て方が非常に重要になります。品種によってベストの光量、光質は異なるのですが、シンビでは品種ごとの研究がされていません。経験で行われております。
鉢物として栽培されている品種はシンビ全体から見るとひじょうに狭い一部分の品種です。葉の変化に注意して管理します。前期の病状の大部分は光に関係しているからです。
30000ルクス、50%のシェードを基準にして加減します。
 日除け
Cymbidiumには2n(倍体),3n,4n,5nの個体がありますが、倍数体の違いで、この時期の生育に大きな差が生じます。2nを基準にすると倍数体の個体は「細胞」が大きく、この差が「生育がよい」ようになります。カタログには「生育旺盛」と記載されます。倍数体の個体は生理作用も2nに比較すると呼吸作用、光合成も多く、水の吸水、肥料の吸収も多いです。したがって、耐乏生活には弱いので注意が必要です。これは、人間が人為的に作った倍数体の品種で、自然の突然変異の倍数体で淘汰の中で生き残った個体の3nは、非常に強靭な性質を持つものが多い。バナナ、鬼百合など。シンビでは人為的に作られたものが多くメリクロンから初花までは非常に強いが、株分けでガタッと落ちる品種があります。
 倍数体と生育
原因
葉の高温 品種によってこのような斑点になる。夕方冷水のシリンジ
肥料切れ
肥料を与える
原因
葉の高温春に黄色の大きい斑点は薄く顕れる。この斑点が夏に黒斑になる。
春に温室の通気を朝から行う。
原因
葉の高温
夕方冷たい水のシリンジ
肥料で根ぐされ
植え替え
黒点病
黒斑病
葉枯れ病
前記した高温、多肥、多湿栽培はシンビの自生地にない環境条件ですので一つ間違うと自生地にない病気の大発生を見ることがあります。これは全て人間がもたらした病気です。
Cymbidiumは病気で枯れるような植物ではないのです。非常に生育の遅い植物で簡単に病気にかかったら、簡単に絶滅するからです。

この時代の葉の病気はほとんど「生理病」です。
生理病は細菌、カビで発生するものではありません。体調の変調で起こります。原因は紫外線、高温、肥料焼け、根ぐされなどです。葉の異常が目に付いた時は、既に手遅れです。普通の作物、植物では病気が出てから消毒しますが、シンビでは何の効果も無いのです。
 この時期の葉の病気
現在の品種の多くは二つの系統が複雑に交雑されています。12−3月咲きのものはほとんどこの交雑によって作られていますが、中には純粋なものも少ないですがあります。4−6月咲きのシンビには両種の交雑種は有りません。

このページの私のシンビはほとんどこの二つの系統の交雑種です。
花が咲き易い性質、株分けしても回復力が強いからです。そして美しい・・・・欲張りの特性を狙って交配したからです。見事に成功した個体は極めて少ないですが作ることが出来ました。そのような個体は何万本に1本の確率のようです。ただ単に花の美しい個体なら出るのですが、美人薄命では・・・・・
 感温性品種と感光性品種の交配種
春の暖かさに感応する。
日本の、自生地の冬は温度は低い。生育を止めて「休眠」してやがて来る「春」の温かさを待つ。そして雨期の来るのを待つ。この系統が「感温性品種」です。
この系統は冬の乾期を越してから新芽を伸ばすので、冬の気候、環境に大きく左右されるので、作る場合は冬の管理がキイポイントになり、新芽の伸長開始時期が不ぞろいになります。シンビが栽培が難しいのはこの系統です。シンビの主要な原種、素晴らしい名花はほとんどこの系統です。日本のラン展にシンビの名花の出品がないのは、この理由によるものです。
花が咲いた株に翌年咲かないのは、この系統の生育パターン、主芽が花芽になる、花が咲き終わってから新芽が出る・・・ことによるものです。

 感温性品種の特性
秋の彼岸の日長に感応する。
日本では夏至の日が一番日が長く、秋に向かって段々日が短くなりますが、秋の彼岸「秋分の日」で昼と夜が同じ12時間になります。この日長の変化をとらえて、秋分の日頃になると新芽が伸長を開始する。この新芽は翌年の夏至に止め葉を出して生長を止める。
Cymbidiumの葉は前記したように(葉のすべて)、1ケ月に1,5枚生長します。9月ーー6月まで約8−9ケ月ある。このことはどういうことかといいますと、1,5 x 8 =12枚になり容易に花芽分化可能になります。つまり、毎年リードに花が咲くのです。この系統の品種は非常に花立ちが良く、毎年咲く可能性がある。この系統の開花時期は3月咲きまでです。
 感光性品種の特性
前記したような多肥、高温、多湿栽培でなく自生地の条件と同じ低温、少肥料、雨期乾期で育苗した時は、品種本来の新芽の発生伸長開始時期があります。
Cymbidiumには「感温性品種」、「感光性品種」がある。
イネにも「感温性品種」があり、温度に感応して止め葉、花芽分化するもの。「感光性品種」は光に感応して止め葉、花芽分化する品種があります。イネの進化の過程で、インデカ種、ジャポニカ種の違いは「感温性品種」「感光性品種」にわかれ、熱帯から温帯、今では北海道の稚内、網走でもイネ栽培は可能になったのは光に感応しては花芽が分化する系統がイネにあったからです。

シンビの生育、花芽の分化はシンビ栽培のキイポイントになる重要なものですが、品種ごとに「感温性品種」「感光性品種」に分類すれば、的確な栽培法を確立することが出来るのですが、いまだ、研究されないで残っています。

このホームページで、世界ではじめてCymbidiumの「感温性品種」「感光性品種」を記載しますが、皆さんも研究してみてください。
前記したように低温、少肥料、雨期乾期の条件で栽培しても「9−10月」に新芽が伸長開始する原種、品種がある。これが感光性品種です。低温の冬が過ぎて春の暖かい温度に感応して芽が伸長するのが「感温性品種」です。
 新芽の発生伸長開始時期
シンビは熱帯植物から温帯植物に変化するランである。
この時代のCymbidiumは前記したように「温度」に感応して生育しています。フラスコより出して翌々年の夏、シンビは光に感応して葉の枚数を増やす成長を止める行為を行います。それが「止め葉」の分化です。夏の高温の下で葉が分化できるのに、生長を止めるのです。このように生長をとめることを身に付けたことこそCymbidiumなのです。このことを進化の中で得たからこそシンビは何百年も生きつづけることが出来るようになったのです。例えば、胡蝶蘭、バンダなどはこのことを得られなかったランです。シンビが100年も前の品種が残っていますが、胡蝶蘭、バンダなどでは100年も前の品種は一つも残っていません。
止め葉がでる前は、シンビもバンダも胡蝶蘭も同じパターンの生育をしているのに、シンビは突如としてシンビとして自立した生育パターンを主張して、わが道を歩むことになる。ラン科植物には26000以上の原種があるが、これほど生育パターンを変えるランは多くは無い。これは、シンビが熱帯植物から温帯植物に変化することでもある。
バンダ、胡蝶蘭が今も熱帯のランとして居残り、シンビは新天地を求めて日本まで北上することになる。シンビ属の自生地がアジア圏の熱帯から温帯の積雪地方まで及ぶ。シンビの栽培がランの中で最も難しいいのは、作れば作るほど難しくなるのはこのことなのです。ラン展では趣味家でも多くのカトレアが出品されているのに、趣味家で見事なシンビを出品してるのが極めて少ないのは、継続して良く作るのが難しいランだからです。シンビにカテゴリーが少ないのではなく、多くのカテゴリーをカトレア、パフィオのように栽培できないからです。

 葉の分化終了
CPサイズから1Bまでの生長は、ひたすら葉の面積を増大する目的で行われる。一枚の葉は「葉について」の項で記したように、葉鞘、離層、葉身で構成され完成する。完成すると葉肉の厚さは増大することはあっても面積は増大することは無い。したがって葉の面積を増大させるには新しい葉を発生伸長させる。この新しい葉を分化伸長させるにはエネルギーが必要になる。このエネルギーを完成した葉の工場が作ることになる。
この姿は最初ちいさな会社を作って働いて資本を蓄積して少しづつ会社を大きくしてゆくのと同じです。植物は飽くまでも自分の力で大きくなります。他人の力を借りたりすることはありません。2年で一つの区切りをつけて第一次計画を完成させます。
1Bを完成させれば、第2次成長計画になります。とにかくこの時代は「働きづめ」の毎日です。
   葉は光合成の工場
この時期の苗は肥料切れに非常に敏感で、最初葉に症状が顕れます。
1、葉の色が黄色になります。 2、葉肉が薄いです。 3、葉の幅が細いです。 4、下葉が黄色になって落ちます 
4の葉が落ちるところまで栄養不足になると、光合成の工場が少なくなるので当然生育は衰え生きているのに精一杯という状態になります。葉を落とす意味は、葉の養分を生長点の細胞分裂のエネルギー源にして使用し、養分が無くなれば無用になるので落とすのです。肥料が充分ある状態では葉は落ちません。
 肥料切れの症状
2個の小さなバルブ形成
1個の大きいバルブ形成
新芽
伸ばす
新芽
かきとる
新芽
かきとる
新芽
かきとる
 芽かきしないもの
 芽かきしたもの
工事継続します
このような高温、多肥、多湿栽培はシンビの本来の生育パターン、栄養状態と大きく異なった生育を行います。最も大きな違いはリード(新芽)の発生とその時期です。
肥料切れ、又は、少量の施肥栽培ではこの期間の苗では新芽の発生は見られない。自生地では雨水などに含まれるわずかな肥料分で生きているので、この期間に新芽の発生はない。したがって、肥料を多く与えるにしたがって発生は多くなる。下図のようにこの芽をそのまま生長させると、生長エネルギーが2つの生長点に分散されるので大きな1個のバルブに肥大しない。2個の小さなバルブを形成する。1個のバルブの重量と2個のバルブ重量がほとんど同じです。
 芽かきについて
このように常に熱帯地方ような環境で育苗した時は、充分な通気を図る必要が出てきます。この充分な通気の条件の下で成功する栽培法です。通気と風は似ていますが違うのです。通気は大気の大きな対流です。水墨画の世界では「気韻生動」と表現されているものです。扇風機で風を当ててもシンビは喜びません。自然の空気の動きが大切です。
 通気を良くする
一年中最低温度15℃以上にした場合は、冬期でも生育を止めることはないので、肥料を与えることになります。シンビの与える量は品種によって大きな違いがあり、標準施肥料は確定していません。経験で根ぐされを起こさない限界まで与える。条件によってはかなり少ない与え方でも同じように生育するので、シンビの本当の肥料要求量は環境条件でも大きく変化します。化学肥料と有機質肥料の両方をあたえる。この場合乾燥させると根ぐされがおきますので、多肥栽培は高温、多湿にしなければなりません。
 多肥栽培にする
 高温栽培にする
モンスーン気候の雨期は長日の時期ですので日長は12時間以上にする。短日条件は生育に悪い影響を与えますので秋から冬の期間は電照も効果があります。シンビは5ルクスで日長を感応しますが、光合成は3000ルクス以上といわれています。
 常に長日条件にする
前記したようにこの時期のシンビは熱帯植物なので、簡単にいえばバルブの持たない熱帯原産の胡蝶蘭と同じ栽培になります。
常に雨期の状態です。雨期ですので肥料も切らすことなく油粕であれば1ケ月に1回の割で与えることになります。
 常に雨期の状態にする
この期間のシンビは温度に感応して生育するため最高温度28℃、最低温度15−18℃。潅水は多く与える。夕方与えた水が翌日の夕方まで少し残って根に少しペクチンが発現するのが理想です。鉢の種類、大きさ、コンポスト、ハウスの構造、ハウスの立地条件、毎日の気象条件など異なりますので、細かい気配りで調節することになり、このことは言葉でも、文章でも書けないのです。、この期間のシンビは主に温度に感応するので、温度を基準にして、潅水、通気、肥料を組み合わせることになります。
  最適な環境条件
Cymbidiumは上の図のようにフラスコより出して翌々年の秋に止め葉を出して生長を止める。プロトコームから数えて3年目の秋でシンビは熱帯植物の性質から温帯性植物に変身する。バルブを形成することによってシンビは何千万年の進化で得た温帯の四季の変化、雨期乾期の変化、長日、短日の変化に適合する機能を具備したことになる。
バルブ形成までのシンビは丁度イネと同じ生育をするのです。
秋10月乾期になって葉から水分を吸収してバルブに水分、養分を蓄える。
7−9月頃止め葉が出来て生長を止める。
次々葉を分化する
バルブが肥り始める
止め葉
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冬高温栽培 冬も生長を継続
冬 高温栽培
翌々年の秋
翌々年の夏
翌々年の春
翌年の秋 バルブは形成しない
翌年の夏
翌年の春
単鉢に上げる
秋9月フラスコ出し
CPサイズ
 高温栽培は冬でも生長を止めないで生長を続け、18−24ケ月後の秋(翌々年の秋)に巨大なバルブを形成する。低温栽培の場合は冬に生長を休むので葉の枚数が少なく小さなバルブを形成する。
Cymbidiumは1Bを形成するまでは熱帯植物です。
1Bを形成した時始めてシンビはシンビになるのです。1Bまでは胡蝶蘭、バンダなどと同じ生育パターンで生長します。

Cymbidiumは秋9月にフラスコ出しを行えば2年後(24ケ月)の秋に1Bを形成します。春3−5月にフラスコ出しすれば18ケ月後の秋にバルブを形成します。つまり、この18−24ケ月は熱帯植物と同じように休眠しないで生長を継続して行う性質を持っているのです。自生地では乾期があるのですが、この期間のシンビはバルブを形成することなく生長を止めた状態で冬、乾期を過ごします。

この18−24ケ月の期間、水をどんどんやって、肥料も多く与えて、最低15℃以上の温後で栽培すれば、次々に葉は分化して葉の枚数を多くします。葉が多くなるほど大きいバルブを形成するのです。
 シンビは熱帯植物・・・・?
Cymbidium
Mericlone,無菌培養でフラスコ培養されたCymbidiumのフラスコ苗は、培養基の栄養不足になる前にフラスコより出して寄せ植えします。この寄せ植え苗をコミニティーポットサイズ苗(CP苗)と呼んでいます。
ほとんどのランは、このCPサイズから開花まで数年を要します。CP苗の育成は基本的な考え方は自生地の環境を再現することです。この考えに立ってより積極的に技術を加えれば、自生地の生育スピードより短時間で開花を見ることになります。
CymbidiumではCPから1Bまでが非常に重要な期間ですので、これについて記します。

    CPから1Bまで

cp