ランの無菌播種、Mericloneは無菌状態で培養するのでフラスコは殺菌する。
高圧殺菌釜での殺菌・・・・1,2気圧で30分。
常圧殺菌・・・・・・・・・・・・・沸騰1時間 24時間おきに3回行う。
有機物の無菌添加・・・・・ミネポアフィルターなどで無菌にしたものを用いる。加熱によって有効成分の変化を防ぐ。
 培養基の殺菌
Cymbidiumの培地には多く処方されていますが、播種、Mericlone用として調合が簡便なものに狩野博士が開発したハイポネックス培地があり実用に用いられています。
  水    1リットル      ハイポネックス  3g      砂糖   30g     ペプトン  2g
  寒天   15g        pH 5,4−5,8  pHは塩酸1モル溶液で調整
  添加ホルモン αナフタレン酢酸, 2,4−D、カイネチン、ジベレリン、倍数体作成にはコルヒチン。
  添加有機物  バナナ、ココナッツミルク、馬鈴薯など。
 
 ###  ホルモン、有機物の添加は品種によって染色体異常を起こすものがあります。
        濃度、添加量は加減する必要があります。
 ###  研究用には水は蒸留水、薬品は試薬特級、寒天は99,99%の純度のもの使用。
 ###  フラスコなどに入れて培養基を作製。
 Cymbidium用培養基の作製
次ページはCP苗から1バルブ株まで
次へ
固形培地ではPLBの切片は約1ケ月でPLBになる。このまま培養を続けると発芽し小苗に生長する。大量増殖の場合はカットを1ケ月に一度の割で行わなければならない。

液体培地ででは、PLBは発芽することなく増殖を継続する。このPLBを固形培地に移植すると発芽する。
 液体培地での培養
フラスコより出して水苔などで植える。寄せ植えする。
PLBカット中止後約4−6ケ月後のフラスコ苗
 PLBの発芽

 カット中止

固形培地の場合は1ケ月でPLBに生長し発芽する。発芽する前に1ケ月ごとにカットを繰り返す。1〜4、4〜16、16〜60、60〜250、250〜1000と増殖する。
PLBに生長
 切片はPLBに生長
培養条件はと同じ

培養基
PLBの切片
約3000ルクスの照明
16−24時間照明
暗黒条件での培養もある
20−23℃で培養
1個のPLBを数個にカットする
 PLBの数個の切片
PLBを垂直にカット
PLBを垂直にカット
生長点
培養基
 約0,3mmに カットする
ウイルスのないバルブが安全
新芽を取る
5−7cmの大きさ
のときが良い
 フラスコ出しCP苗
 フラスコ苗
メリクロン技術の無い時代は同一品種による大量生産は不可能であった。
flask
 大量培養
 PLB切片の培養
 PLBのカット
 PLBの発生
 培養開始
 生長点組織の摘出
 芽の無菌処理
芽を水洗いし清潔にした後にサラシ粉8%溶液などで無菌にする。
Mericloneは培養中に染色体変異が発生するが、稀にではあるが基本種より優れた形質を具備したものが生まれる場合がある。主に倍数体変異であるが、草姿、花形に変異が現れることが多い。
メリクロン培養中のフラスコにコルヒチンを注入して倍数体個体を作ることも行われている。
 Mericlone変異による育種
植物特許、知的所有権の確立
ランの新品種開発には多大なコストがかかりますが、メリクロンによる産業化への方向は、より優れた品種の開発が重要になる。メリクロンは大量のコピーを作る技術で、その基になる個体の開発はますます重要になる。
園芸には花卉園芸、果樹園芸、蔬菜園芸がありますが、栽培技術も重要であるが、最後は品種である。
 新品種開発の重要性
 芽の採取
 芽の採取からFlask出しまで
Mericloneの方法
1 ウイルスフリーの苗株を作る
2 同一個体の大量増殖による栽培。
3 貴重な原種の組織による保存、苗株の増殖。

日本では、大量増殖にメリクロンを用いてランの大衆化をはかり、安価に消費者に供給。今日多くのランでメリクロンが行われ、高嶺の花であったランが大衆のものになった。
弊害として、ランの貴重性は失われランに深い思いがなくなった。安価で多くなれば大切に扱わなくなる。
 Mericloneの意義
Mericlone技術の正確な論文は永く秘密にされたために、世界のラン界はメリクロンに遅れた。ようやくその技術のおおよそのものが公表されたのが1966年頃である。世界各地で追試験が行われ、日本でも多くの人によって研究された。
この時代は、クリーンベンチ、クリーンルームが未だ開発されていない。無菌にするには有機水銀剤を用いるので、常に水俣病の危険にさらされての研究であった。
日本で一応の成功をしたのは1968年(昭和43年)頃である。宇井清太など数人が成功した。
 日本のメリクロン開発
  CymbidiumのPLB

 大量生産
 大量消費

 切花、鉢物大栽培
 苗の大量
 生産
 PLBの
 大量生産
 生長点組織のカ  ット
 優良個体
 の選抜
 Mericloneからラン産業へ
Morel博士はこの技術を「Mericlone」と命名した。MeriはMeristem(生長点)のMeri。Cloneは個体、枝を表わし、MeriとCloneを合わせて「Mericlone」と命名したのである。
ラン界ではMorel博士の功績を称えて、この技術をMericlone、この技術で作られた苗をMericlone苗と呼んでいる。
 Mericloneの命名
 ウイルスフリーの育成
Cymbidiumの生長点組織培養では、約0,3mm程度の大きさに生長点組織を取った場合PLBにはウイルスがないことが確認された。このPLBから発芽した苗にもウイルスが無いことが確認され、ウイルス罹病株から健全な苗を育成することが可能になった。
 ランは生長点組織が生長するとPLBを形成し、1−2ケ月後 に発芽して小苗になる。
 カーネーションでは生長点が生長し小苗になる。
 小苗
 生長点組織
 培養基
 PLB
 培養基
 生長点組織
 カーネーションの生長点培養
 Cymbidiumの生長点培養
   Mericlone 

戻る

Morel博士は芽の出る前にPLBを数個にカットした。この数個の切片を培養基に植えたところ、1ケ月後に数個のPLBを形成した。さらにこの数個のPLBを数個づつにカットし、同じよう培養したところPLBを形成した。
1−−4、4−−16、16−−60、60−−240、240−−1000・・・・というように、シンビでは1ケ月に約4倍づつ増殖する(品種によって大きな差違がある)。シンビは自然増殖では1ケ年に1−2ケのバルブが増えることに比較すると数万倍の速さで増殖することになる。
シンビは同じ品種で大栽培するには何十年も要し、同一品種による切花、鉢物栽培は不可能に近いものであった。メリクロン技術の開発は、シンビを一般の植物の無性繁殖のように大量増殖を可能にした。それは同一品種での切花栽培、鉢物栽培を可能にした。
 Mericlone と苗の大量生産
Morel博士は生長点培養の実験過程で「プロトコーム ライク ボデー(PLB)」を発見した。このPLBこそランが植物進化の頂点で得た組織である。ランは種子が発芽するとき「プロトコーム」が発生し、プロトコームから発芽するのであるが、生長点組織培養でも「プロトコーム」に似た組織(PLB)が発生し再分化することが判明した。他の植物ではPLBの発生は見られない。このPLBの組織がランの大量増殖を可能にした。 
 普通の植物とランの違い
1950年代、世界のラン界は新品種作出に燃えた時代であった。4倍体の交配親の発見は素晴らしい品種を続出させた。
このような時代の中でMorel博士はウイルス病の克服の中で、1960年に革命的な新発見と新技術のクローンを手にした。ランは新天地を拓くことになった。

 1960年メリクロンの成功

新芽の茎
腋芽 ウイルスに侵されている
ウイルスに侵されている組織
茎頂の生長点
約0,3mmにウイルスが無い

ウイルスフリーの生長点

Cymbidiumはシンビジュウムウイルスとカトレアウイルスにおかされます。1950年代、世界各地のラン栽培はウイルスの罹病が大きな問題になり、防除法がないため多くの貴重なランが焼却処分されました。
フランスのG,Morel博士は、多くの植物で茎頂の生長点培養によるウイルスフリーの研究を行っていた。この中にランのウイルスフリーの問題が起こり実験が行われた。シンビではウイルスに罹病している新芽であっても、下図のように茎の先端の生長点0,3mmの組織にウイルスが無いことが判明した。この部分を組織培養すれば無菌の健全な植物体が得られるのではないか・・・・。メリクロン開発の基本の考えはこのようなものであった。

mericlone