Arcadian Promenade
 Precous

和泉式部

待つ人のいまもきたらむいかにせん
          踏ままく惜しき庭の雪かな

 毎月別のテーマのもの掲載します。名歌100首と銘花100花、エッセイ100編で雅の世界を創ります。
写真集「掬粋蘭花」から転載。
宇井 清太
 

 待つ人のいまもきたらばいかにせむ
         踏ままく惜しき庭の雪かな

                      
和泉 式部 (生没年不詳)
                           和泉 式部集  平安中期


 私がているあの人が、今やってきたらどうしよう。あの人にでも、
 踏んで欲しくないほど美しい庭の雪な のだから・・・・。

 MOG94-85
 Arcadian Promenade
  花径 13cm 1995年
  1月咲き 大型種

yuyu2


































 

      
































            
 「雪に月の光があたっているのはとってもいいーーー」。
            梅の梢には、白い花が咲き匂っているように雪がとまってーーーー。
           
           情感豊かな「いい女」をイメージするシンビは、私の最も追い求めている育種テーマの
           一つであるが、特に、和泉式部のこの一首は心に残る。
           一輪の花に、「雪)「月」「花」をやどしーーーー
           そして、密かに燃える「女芯」のシンビを創りたいと想い続けてきました。
           
           この花を見たときーーーー
           私は、和泉式部の息づかいを、熱い想いを包むような「雪明かり」を掬ったと思った。
           私は、この花の真っ白なLipを庭の雪にーーーー
           紫紅色に滲むずい柱に、恋人の訪れを待つ和泉式部の熱い「女の息づかいを見る。
           花びらに染まる薄紅は、雪見障子を細く開けて、恋人を熱く心待つ和泉式部の雪肌か。

             真っ白な柔らかい雪は、女心を、ただ恋人を想う「無垢」にする。
           こんな夜は、ことさらに、白い肌が熱くなる。
            
           雪の降り積もった夜は来ないでーーーー
           足跡が残るからーーーー。         
           
           男というのは、昔も今もにはの雪を踏みにじるが,           
           その熱情を,力強さを、残酷さを恋しく待ち想うのも女の業かーーーー。